リアルな不動産に対してNFTを発行する

不動産NFTとは、リアルな不動産をNFT化したものである。賃貸用の住宅を購入する、別荘をシェアする、NFTを買ってホテルの建設資金を提供するなどさまざまなプロジェクトがあるが、法的にはまだ難しい部分がある。

「不動産NFT」は、リアルな不動産をNFTにひもづけたものです。あらかじめ取り決めたことを自動実行する「スマートコントラクト」による不動産取引の自動化、安全化が見込まれるほか、不動産の販売主が、一次流通のみならず二次流通からも利益を得られることにも期待が寄せられています。

「リアルな不動産に対してNFTを発行する」という共通点のもと、すでにさまざまな不動産NFTのプロジェクトがあります。

たとえば「プロピー(Propy)」は、NFT化した不動産を売買するプラットフォームです。不動産を売る人、買う人、取引を代行する人などが、自分のウォレットをコネクトして不動産取引を行えるようになっています。プロピーの開発会社は、不動産など高額で持ち運び不能なものは、もともと所有権がデジタル化されてきたので、NFTとの親和性が高いと話しています。

家賃収入をNFTで受け取ることはまだできない

「ノットアホテル(NOT A HOTEL)」は、別荘のメンバーシップ(利用券)をNFT化し、販売するプロジェクトです。また「アンゴ(ANGO)」は、リアルな物件にひもづけたデジタル不動産のNFT(ANGO NFT)を買うと、「メタバース」に建てた「家」として保有できるというもの。NFTにひもづいているリアル物件に、NFTの所有者自身が宿泊することも可能です。

その他、NFTを発行してホテル建設の資金調達を行い、建設後は、そのNFTをホテルの宿泊券として使える、といったプロジェクトの構想もあります。

ただし「不動産NFT」は、法的に難しいところもあります。NFTを持っていることで「シェアしている別荘を使える」「建設の資金提供をしたホテルに泊まれる」といった利用権を得るのは問題ありません。

しかし家賃収入などのインカムゲイン、つまりフィアットエコノミーでいう「株式配当」に当たる収益をNFTで受け取ることはできません。クリプトエコノミーについては、いまだに、そのあたりの法整備が追いついていないのです。

ただ、法律は社会の変化の後追いでつくられる傾向が強いものですし、すでに不動産NFTを実現するスキームは存在しています。今後普及することも見越して、本書ではいったん法的なところは保留とし、不動産NFTのコンセプトを紹介しておきます。