成人の頭の重さは約4~6キロだと言われています。アメリカの脊椎専門医ケネス・ハンスラージ氏の研究によると、頭が前に傾くほど首への負荷は増し、角度が15度になると12kg、30度18kg、45度22kg、60度27kgの負荷がかかるとされています。これは小学2年生の平均体重に相当する負荷が、あなたの首周りにかかっていることになります。

まず見直すべきは、座っている「時間」ではなく、座っている「姿勢」なのです。

男性に多い「O字型」姿勢、女性に多い「ハの字型」姿勢

じつは座り方においては、男女で注意すべきポイントが異なります。

男性に多いのが、両膝を離して座り、中央に両足を置いて、母指球で支える「O字型」の座り方です。この座り方はヒザが鋭角になり、かかとが浮いて足指のつけ根が折れているので、ふくらはぎへの負担が強烈です。

手で頭を支えて椅子の背もたれに寄りかかる男性
写真=iStock.com/LeoPatrizi
※写真はイメージです

座っているだけなのに疲れを感じるのは、この「O字型」姿勢が一因と言えるでしょう。

一方、女性に特に多いのが、椅子に浅く腰掛ける姿勢です。この姿勢で一番よくない点が、ヒザをくっつけて足首は離している「ハの字型」の下半身です。

こちらもヒザの角度が鋭角になってしまい、足指のつけ根を折って体を支えているため、つねにふくらはぎが緊張を強いられていることになります。

最初のうちは背中を反らせて姿勢をよくしていても、足と腰が疲れていき、しだいに頭が前に出て猫背になってしまいます。

こうなると肩回りのダメージも大きく、首や肩もガチガチに硬くなってしまいます。長時間のデスクワークには、間違いなく向かない姿勢と言えるでしょう。

いちばん重要なのは「座る前」

私の治療院を訪ねてくる方は、病院や別の治療院に一度は行き、そこでの診断結果や治療方針に満足できずに来られるケースがほとんどです。

多くの病院や治療院は、患者さんが訴える症状をベースに、痛みの原因を探っていきますが、私の場合はその訴えを聞く前にまずやっていただくことがあります。

それは何かと言うと、立つ、歩く、そして座るという日常動作です。

体のいたるところがガチガチに硬かったり、ダルさや重さを感じていたり、すでに痛みが出ている人は総じて、普段の体の使い方の癖に問題があります。

「座る」という行為ひとつをとってみても、細かく動作を分解していくと、着座するまでの動作、座っている姿勢、立ち上がっていく動作という3つに分けることができます。

私はその動作を実際にやってもらい、それを細かく観察・分析することで、理にかなっていない動かし方をしている部分はどこか見極めます。

なかでも着座するまでの動作と立ち上がっていく動作については、おそらく9割の人が人生において一度も気にかけたことがないのではないでしょうか。

そして、座っているだけで腰を痛めたり、疲労を感じたりする人に共通しているのが、この着座前後の動作に悪しき癖を抱えています。