ヘルメットなしで、致死率は2.6倍になる

警察庁のまとめによると、自転車に乗った人が死傷した交通事故は2022年、前年比291件増の6万9985件に上っています。交通事故件数自体が減少傾向にある中、自転車が絡む事故の比率は増加傾向にあることが分かります。

【図表1】自転車関連事故(第1・第2当事者)件数の推移
出所=警察庁交通局「令和5年春の全国交通安全運動の実施について」

昨年までの5年間で自転車事故による死者数は2005人、負傷者は36万3751人に上ります。死者数のうち、1116人(55.7%)は頭部を損傷。さらにそのうち1071人(96%)がヘルメットをかぶっていませんでした。警察庁は、ヘルメットを着用しないことで、致死率(死傷者のうち死者の占める割合)が2.6倍になると指摘しています。

【図表2】自転車乗用中死者・負傷者の人身損傷主部位比較
出所=警察庁交通局「令和5年春の全国交通安全運動の実施について」

どんな場面で自転車の死亡事故が起きるのでしょうか。警察庁のまとめによると、昨年までの5年間で最も多かったのが、出会い頭の衝突事故です。762人(38.4%)が死亡しています。

ちなみに、自転車同士の衝突事故や単独の転倒であっても、想像以上の衝撃が身体にかかります。JAFが行った実証実験の動画と結果を見てみましょう。この実験は、母子3人が乗る自転車と男性が乗る自転車が出会い頭衝突した際の頭部損傷基準値(HIC)をヘルメットの有無で比較したものです。自転車の速度は時速20キロです。

「最も重要な頭部を守るための唯一の安全装備である」

結果は、後席子供ダミーの「ヘルメットなし」のHICが1万5000を超え、「ヘルメットあり」と比べて約17倍もの高い数値になりました。HICが700~2500で死亡する恐れがあるとされる水準です。

単独の転倒事故を想定した実証実験では、「ヘルメットなし」は「あり」の場合に比べ3倍の衝撃が頭部に加わりました。HICは900近くとなり、こちらも死亡する恐れのある水準に達しました。