佐久長聖高とプロチームのガチンコ対戦をみんな見たい
他にはどんな活動をして発展させていく予定なのか。
「今までにやってきて培ってきたものもある。例えば、指導者育成や、女子野球。障害予防や栄養学に関しては医科学系を加えて、そこに信州大を組み入れました。研究機関としてフィードバックできるようにしたい。指導者ライセンス制も確立できればいいし、選手たちの就職支援もしたい」
25年間の高校野球監督生活で得たものを還元して新しい野球界を作りたい。県高野連会長から現在は長野県野球協会専務理事を務める小林の大志の源泉はそこにある。
第2回のトーナメントは前述の通り今年3月下旬に行われた。決勝は雨のためグラウンドコンディション不良で5回で打ち切られた。両チームと主催者が協議して、3対3の引き分けで両チーム優勝となった。
準決勝の試合前には中学生のブラスバンドの演奏があった。また、決勝の前にはチアガールズの応援合戦も。ゲーム後、室内練習場で園児を対象にした「遊ボール」の実演を行い、松本大の清野監督自らマイクを持って熱血指導した。これには近隣の園児が50人、参加して楽しんだ。
決勝戦の途中、象徴的なシーンがあった。
降りしきる雨の中、協会専務理事の小林と、協会副会長の飯島が自らすすんでマウンド上でぬかるんだ泥を取り除いたり砂をまいたりしたのだ。「当たり前のことをしたまでです」と飯島が言う。
「将来的には高校生も県知事杯のトーナメント大会に参加できたらいい。例えば、佐久長聖高とグランセローズが対戦したら100パーセントの人が高校生を応援するでしょ。そんな試合も見てみたい。県全体で一つになるロールモデルになっていけたらうれしいですね」
小林は春夏の甲子園では球場に詰め、大会の運営を担う本部役員でもある。その立場で野球の現状を見つめる。
「中央は、(野球人口が減少している)地方の実情をわかってくれません。地方に裁量権を与えなければ、地方はますます衰退してしまいます。中央の人は耳を傾けてくれないこともないけれど、甲子園があれだけ盛況なので危機感が薄いんです」
信州は昔から革新的な土地柄だ。地方からの産声に、中央が動くこともある。野球人口の回復とさらなる普及。喫緊の課題が日本の球界に突きつけられている。