シニアの仕事内容における選択肢を前提から見直す

シニアにとって、仕事に従事することを選択肢にくわえることまでは誰にも異論はないだろう。では、その仕事の中には、どんな選択肢があるのだろうか。従来、定年後の仕事の主な選択肢は3種類だと考えられていたと思われる。第1が今の組織での現職継続、第2が転職、第3が起業である。しかし筆者はこの3種類の分け方は従来の考え方の延長線であって、柔軟性を欠いていると考える。

定年後の仕事のあり方が小さな仕事でも大丈夫となれば、現職継続、転職、起業という3種類の選択肢が多様化する。そもそも現職継続、転職、起業という選択肢を考えた時に、無意識のうちに週5日間で、午前9時から午後5時まで働くようなフルタイムの就業を前提としていないだろうか。しかし小さな仕事であれば、時間や場所に縛られない柔軟な就業形態が可能であろう。そこで、フリーランスという第4の選択肢を付け加えたい。

笑顔で電話対応するシニア男性
写真=iStock.com/Koji_Ishii
※写真はイメージです

シニアだってフリーランスで仕事を請け負える

ここで読者には疑問が湧くだろう。起業とフリーランスは何が違うのか。そもそも、起業とフリーランスは、厳密には比較できるものではない。起業とは新しく事業を起こすという意味であって、就業形態を説明する概念ではない。それに対してフリーランスは就業形態のひとつである。この点を明らかにするために、【図表3】をご覧いただきたい。

【図表】多様な働き方の全体像

この図表では、筆者がアドバイザリーボードに所属しているプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(以下、フリーランス協会)が作成したものを、抜粋して簡易的に示している。まず働き方、つまり就業形態は大きく労働者と事業者に二分される。左側の労働者とは、雇用による働き方である。いわゆる正社員、派遣社員、契約社員、パート・アルバイト等が該当する。現職継続、転職という2つの選択肢を検討する時は、その前提としては雇用による働き方が中心になるだろう。

これに対し右側の事業者とは雇用によらない働き方を意味し、全般的にフリーランスという呼称にあてはまる。図表を見てわかるとおり、フリーランスと呼ばれる就業形態の中が多様性に富んでいることがわかる。起業とは何か事業を起こすことであるから、事業を起こした後にはこの図表の中では自営に分類されるだろう。つまり、起業をあえて分類するなら、フリーランスの種類のひとつということになる。