筆者も小学生の頃、その親戚が「芋掘りに来られえ」というので出かけたことがある。いってみると、あちこちの空き地を住人たちが勝手に畑にしてサツマイモや野菜を植えていた(昭和の頃にはまだ空き地を勝手に使うことを咎める人は少なかった)。そうした空き地も今はない。
今の岡南地区は、大規模な商業施設も目立つ人口密集地だ。こうして人口が増加した地区で、高齢化が進んだことで、用水路に転落し救急車を呼ばなければならないような怪我を負う人が増えているというのが、行政の認識のようだ。
ただ、この回答にはいささか疑問も残る。「ガイドライン」の統計で事故に遭った人の年齢は65歳以上が63%と最多にはなっている。しかし、それ以下の年齢も3割以上を占めている。やはり年齢を問わず用水路は危険な存在なのではあるまいか。
この記事を書くために、何人かの用水路の落ちた経験がある人に話を聞いてみたが、いずれも年齢は60歳以下である。そして、誰もがその危険性を次のように話した。
「道路との境目を見誤ったら、すぐに転落してしまいます。夕方以降は特に危険です」
人口が増えた結果、用水路に落ちる人も増えたというのが、正しい見方かもしれない。
柵のあるところ、ないところの大きな落差
実際、用水路はどのように存在しているのか。歩いて確かめることにした。「歩いた」とはいえ、干拓地は広い。今回実測したのは、岡山労災病院から南区役所一帯である。ちょうど宅地と田畑が混在する地域だ。
まず目に付いたのは、用水路に張り巡らされた柵である。そう、岡山の用水路イコール柵がないというイメージが浸透しているが、行政も無策というわけではない。岡山市の場合は、2016年から危険箇所を洗いだし、現地調査を実施した上で対策に取り組んでいる。結果、対策が行われた箇所では執拗なほど頑丈な柵が張り巡らされるようになっているのである。
しかし、問題は対策が実施された箇所とそうではない箇所の落差だ。整備された道路沿いでは整備された側では柵が設置されているのに、反対側には柵がないままのところもある。また、用水路に沿って反射板のついたポールが等間隔で並んでいるだけのところもある。
はたまた、住宅が数軒並んでいる傍の用水路なのにまったく対策が行われていない部分もある。ちなみに、対策が行われていない部分は、人通りは少ないとはいえ幹線道路沿いだ。