既得権益や同調圧力が成功の種を殺す

「企業規模が大きいと究極の仮説は立てられないのか……」そんなふうに思った方もいるかもしれませんが、悲観することはまったくありません。

なぜなら、どんな大きな企業であっても、それは小さな組織の集合体であり、事業部単位、プロジェクト単位などの小さな組織であれば、創造的イノベーションを起こすような仮説の投げ合いができるからです。

重要なのは、企業における既得権益や同調圧力によって、優秀な人たちの立てる究極の仮説を殺さないことなのです。

原因は財務省の頭の古さ

日本でGAFAが生まれなかった理由として、別の視点からの仮説を提示したいと思います。アメリカではベンチャーに投資する、いわゆるエンジェル投資家がいて、その巨大な資金がアメリカの企業の新陳代謝を支えています。でも、日本にはエンジェル投資家があまりいないのです。なぜでしょうか。その理由は税制にあります。

竹内薫『AI時代を生き抜くための仮説脳』(リベラル新書)
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ベンチャーに投資しても、その多くは潰れてしまうので、本来は、なかなか投資の対象にはなりにくいのです。でも、ベンチャーに投資すれば節税になるのであれば、資金を投入する人も増えるでしょう。

アメリカをはじめとして、ベンチャーが大きく育っている国には、必ずといっていいほど、税制上の優遇措置があるのです。日本は、経済産業省がエンジェル税制をつくりましたが、財務省の抵抗が強く、なかなか実効性のある制度になりませんでした(私も利用したことがありますが、手続きも煩雑で、期間も短く、控除の金額も低く、多くのエンジェル投資家を呼び込むことはできませんでした)。

つまり、日本でGAFAが育たなかった理由の一つは、財務省の頭の古さにあった……。かなり有力な仮説だと思います。最近、ようやく控除金額の上限が引き上げられたようですが、時すでに遅しですよね。

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