なぜスティーブ・ジョブズは「iPhone」をこの世に送り出せたのか。サイエンスライターの竹内薫さんは「ジョブズに運や才能があったからではない。彼は『未来を創造するための仮説』を立てる天才だったからだ」という――。(第1回)

※本稿は、竹内薫『AI時代を生き抜くための仮説脳』(リベラル新書)を再編集したものです。

スティーブ・ジョブズ氏
写真=AFP/時事通信フォト
2010年6月7日、「iPhone4」を発表するスティーブ・ジョブズ氏(アメリカ・サンフランシスコ)

運や才能がなくてもイノベーションを起こす方法

ビジネスで大成功を収めたり、大きな利益を生むには、時に運や才能も必要なのかもしれません。もっといえば、「たまたま立てた仮説がうまくいった」「本能的にやってみたらうまくいっちゃった」こんなことだってあるのが世の中だからです。

ですが、そうした運や才能とは縁がないけれど、それでも自分の力で少しでも未来を変えたいと考えているビジネスパーソンであれば、やはり仮説力を磨くに越したことはありません。なぜなら、仮説というのは立て方によっては大きなイノベーションを起こす力を持っているからです。

ここで一つ、そのよい例をご紹介しましょう。

多くの皆さんが使っているスマホの「iPhone」。これを世に送り出したのはいわずと知れたアップル社のスティーブ・ジョブズですよね。ジョブズによって2007年に発表されたiPhoneですが、いったいどのようにして生まれたのか、ご存じでしょうか。

ジョブズがiPhoneをこの世に送り出すことができたのは運でしょうか、それとも才能でしょうか。私はこのどちらでもないと考えています。ジョブズとは、「未来を創造するための仮説」を立てる天才だったということです。