巨額損失隠し事件で経営基盤が揺らぐオリンパスの支援先選びが、大詰めを迎えている。同社が8月9日に発表した4~6月期連結決算で、3月末に4.6%の水準にあった財務の健全性を示す自己資本比率が6月末で2.2%までに悪化し、早急な資本増強が待ったなしとなったからだ。

しかし、ソニー、富士フイルムホールディングスに加え、支援先に新たに医療機器大手のテルモが名乗り出たため、オリンパスが支援先を決めあぐねるという異常な展開に陥っている。

「極端な円高に振れた場合、債務超過に陥る可能性がある」。9日の決算発表会見で、オリンパスの竹内康雄取締役専務執行役員は、財務健全化が急務であることを認め、危機感をあらわにした。しかし、「(資本を受け入れない)選択肢はない」

「できるだけ早急に結論を出したい」としながら、支援先は8月末の時点になってもまだ定まらない。

それは、500億円の出資要請を受け入れるソニーと最終調整段階にあったときに、オリンパスに2.1%を出資するテルモの“横やり”が入り、ゴール目前で暗礁に乗り上げてしまったからだ。

テルモは7月26日、オリンパスに対する共同持ち株会社による経営統合の提案を、一方的に発表するというカードを切った。上場企業が合意前にM&A(企業の合併・買収)の具体案を公表するのは異例だ。これは、オリンパス株主の賛同を得て、経営統合を実現したいテルモの強い意思表示に映った。

その後、同社が保有するオリンパス株の価値が粉飾決算で減損したとして、7月に66億円の損害賠償を求めた民事訴訟を起こしたことも明らかになった。テルモが「経営統合提案と訴訟は無関係」と説明したにしても、オリンパス争奪戦を有利に進めたい意図が見え隠れする。白昼堂々の統合提案公表という“荒業”を繰り出し、強引に割って入った事実を考えれば、なおさらだ。

しかし、富士フイルムHDも「出資提案の姿勢は変わらない」(中嶋成博社長)とオリンパスとの経営統合も滲ませ、一歩も退かぬ構え。最有力のソニーを含め、オリンパス争奪戦はまさに三つ巴の様相を濃くしてきた。そこには、オリンパスの支援引き受けを成長戦略につなげたい3社と、経営の独立性を確保したいオリンパスの各々の思惑があり、そのせめぎ合いが、急がれる財務強化と裏腹に、同社に決断を踏みとどまらせている。