名だたる企業のCEOにインド出身者が多い理由

――インド人が欧米社会で大きな成功を収めている例が多くあります。グーグルのスンダー・ピチャイやマイクロソフトのサティア・ナデラ、IBMのアービンド・クリシュナなど世界的な大企業のCEOはインド出身です。なぜインド人にはそれができるとお考えですか。

世界で成功するには、まず努力して高い教育を受けることが非常に重要です。成功者の多くは貧しい家庭の出身で、資本も後ろ盾もなく、一生懸命に勉強し、かつ働くしかありません。それ以外のオプションがないのです。だから、IITをはじめ、MIT(マサチューセッツ工科大学)、ハーバード大学や東京大学など世界のトップ大学に進学し、実力を蓄えるのです。彼らは常にハングリーで向上心を持ち続けているのです。

――インド以外にも貧しい国は多くありますが、インド人の成功者が多く存在している理由はなんでしょうか。

これまでインドでは多少のお金が有っても、それを使い人生を楽しむ機会や環境、商品やサービスなどがあまりなかったのです。そこで優秀で勤勉なインド人たちは、欧米先進国の豊かな社会での生活を求めて世界に出て行き成功したのです。そして、自分たちの子供には世界でトップレベルの教育を受けさせたいと考えるようになりました。

たくさんの生徒に囲まれるアナンド・クマールさん
写真=アナンド・クマールさん提供
たくさんの生徒に囲まれるアナンド・クマールさん

日本人も必要最低限の英語は習得すべき

――世界で活躍するには英語でのコミュニケーション力が必要だと思います。日本人は英語が苦手で苦労している現状があります。その点についてどうお考えでしょうか。

インド人は日本人よりも英語に触れる機会は多いのですが、英語がほとんど使えない子供たちはSuper 30にもいます。その一方で、IITでの授業や講義は基本的に英語で行われます。彼らは真剣に努力して英語の壁を克服して授業についていき、卒業後は世界各国で活躍できているのです。

歴史を振り返ると、これまで日本人は、あまり英語が得意でなくても、大きな成果を出してきました。日本が作る製品は性能が良く、アニメ文化も素晴らしい。また、日本は多くのノーベル賞受賞者を生み出してきました。その意味では、日本人に英語は重要ではないとも言えます。

ただ、時代は変わりつつあります。私から日本人への切なるお願いとしては、ある程度使える英語力は身に付けておいてくださいということです。英語は世界共通のコミュニケーション言語で強力なツールです。英語が理解できれば世界から最新の重要な情報が手に入ります。

私は英語が決して上手ではありませんが、これまでなんとか、海外の人たちとコミュニケーションを取り、必要最低限の交流を重ねて、仕事をしてきました。だから日本の皆さんも、必要最低限の「使える(workable)英語」は習得する努力と時間を惜しまず投資してほしいと考えています。

オンラインでインタビューを受けるアナンド・クマールさん
オンラインでインタビューを受けるアナンド・クマールさん