テキーラ1杯3000円、請求された金額は20万円

40代の男性Aさんは先輩から合コンに誘われ、歌舞伎町のバーへ行くことになった。相手は先輩がマッチングアプリで知り合った女性で、友人を3人連れて来てくれるという。しかし、男性4人で待ち合わせ場所に行くと、そこには女性が1人しかいなかった。「知り合いの店が近くにある。友人はあとから合流する」という女性の案内で、とあるバーに入った。

「バーのシステムは2時間の飲み放題が1人5000円でした。ほかの女の子たちは20分に1人ずつ来て、“さっき仕事が終わったところで”と言いながらテキーラのショットを頼むんです。仕事終わりにいきなりテキーラを頼む若い女性なんて、違和感しかありません。その時点で嫌な予感がしていました」(Aさん)

マッチングアプリを使ったぼったくりの被害に遭ったAさん
筆者撮影
マッチングアプリを使ったぼったくりの被害に遭ったAさん

タイプの女性がいたのでAさんが会話をしようとすると、「みんなで歌おうよ~!」と無理矢理カラオケを始めた。1曲目を歌っている途中から連続で何曲も予約を入れ、サビの部分でテキーラのショットを一気に飲む流れに持って行かれた。

1人5000円なので8人で合計4万円のところ、請求された金額は20万円だった。1杯3000円のテキーラは飲み放題のメニューには入っていないと説明され、そのうえ消費税のほかに「tax」が10%上乗せされており、クレジットカードで支払いをする場合はさらに10%の「tax」がかかると説明されたという。

つい最近までは警察は介入していなかった

歌舞伎町におけるぼったくりの被害は今に始まったことではない。ぼったくりの報道が過熱しているのは、警察が摘発をするようになったからだ。マッチングアプリを使ったぼったくり被害があまりにも増えたため、放置しておくわけにもいかなかったのだろう。また、今年4月の「歌舞伎町タワー」開業に合わせた浄化の一環とも考えられる。要するに摘発するにはタイミングがよかったのだ。

昨年、マッチングアプリで知り合った女性と一緒に訪れた歌舞伎町周辺のバーでぼったくりの被害に遭ったという大学生の男性が話す。Aさんが被害に遭った時とほぼ同じ手法だ。

「バーに入ると自分たち以外に客はいませんでした。店のシステムは2時間の飲み放題で1人5000円だと説明されました。店員からテーブルゲームを勧められ、女性とそのゲームで遊ぶことになりました。負けたら「クライナー」というアルコール度数15~20%のお酒をショットで1杯飲むというルールだったのですが、このショットが飲み放題のメニューには入っていなかったんです。請求された金額は21万円でした」

男性は現金を持ち合わせていなかったため、店の人間に付き添われる形で近くのATMへ行くことになった。しかし、残高不足で全額払うことができず、家族や友人に電話をかけさせられたという。そこで機転を利かせてこっそり110番通報をしたが、やってきた警察官は「民事不介入なので」と対応してくれなかった。

被害が急増すればいまのように警察が動くようになるが、それによって被害が減ると警察はまた「民事不介入だ」と言って野放しにする。だから、「いたちごっこ」が起きるのだ。