国内ではなく海外へ積極的に投資
それを具体的に示すデータを紹介します。
図表1に見られるように、期待成長率は、生産年齢人口が減少局面に入った1990年代後半に2%を割り、それ以降は1%前後を低迷しています。期待成長率が下がると、企業は投資による十分な収益を得られないと考え、ヒトやモノへの投資をさらに控えるようになります。
それを示すかのように、期待成長率に合わせて賃上げ率も2022年まで低い水準が続いています。
この期待成長率の低さは、日本企業の投資行動にも影響を及ぼしています。企業の海外への投資額は2010年代前半から急激に拡大し、国内投資額の伸びを大きく超えていきます。将来不安を背景に、日本企業は国内での積極投資を抑え、より成長が見込める海外展開に経営資源を大幅にシフトしていったのです。
これは企業の価値を高めるには合理的な行動ですが、国内の設備投資が鈍化し、国内発のイノベーションによる需要創出は起こりにくくなります。
こうして、人口減少による成長期待の低下によって投資や消費が縮小し、国内市場の停滞が定着する負の連鎖が起きていきました。
「失われた30年」の真因
日本の人口が徐々に減少フェーズに入っていくことは前々から予測されていたことであり、それ自体は「サプライズ」ではありません。それが、これほどの将来不安とそれによる成長期待の低下を引き起こし、経済の長期停滞から抜け出すことができなくなっているのはなぜでしょうか。
この背後にある「失われた30年」の真因は一体何なのでしょうか。
それは、「人口増に依存した大量生産型の供給体制」と「人口減の予測に基づき深刻化する需要不足」との間のミスマッチという構造課題を抱えていることにあります。