2022年下半期(7月~12月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2022年10月17日)
2009年に始まり2012年に終わった民主党政権とは何だったのか。憲政史家の倉山満さんは「民主党は、よく『売国政党』と言われるが、正確には、まとまりが無さ過ぎて売国する能力すら無かった政党だった。その結果、日本は右と左に分断されてしまった」という――。
※本稿は、倉山満『沈鬱の平成政治史 なぜ日本人は報われないのか?』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
民主党政権が「ネトウヨ」を生み出した
民主党政権時代に対する批判は数々あります。
いわく、「マニフェスト詐欺」「日本破壊」「政治主導詐欺」などなどです。後に菅直人が164項目のマニフェストのうち、一部実現も含めた約75%を達成したと誇っていますが、目玉政策の「子ども手当」では公約の半額支給がやっと、高速道路無料化は試験実施のみです。
様々な政策で問題となった財源は、事業仕分けで思ったよりも捻出できなかったうえ、必要な予算まで削ったと批判されています。行政改革の天下り禁止は骨抜きとなり、税制改革は増税に舵を切る有様で、未曽有の円高で景気はどん底と、言い出したらキリがありません。
何よりも民主党の罪が重いのは、財務省が経済情勢に関係なく増税をする役所に変質してしまったことと、自民党が公明党だけを見て国民の方を見なくなったことです。財務省や自民党の体質は、民主党政権時代からの新しい話で、ずっと昔からそうだった訳ではありません。
鳩山政権は期待値が高かっただけに、「これでは自民党の方がマシでは」と多くの国民に思わせました。また、鳩山民主党に投票した人の少なからずが、思想的に保守に走り「ネトウヨ」化します。このあたりの悲喜劇は、小著『保守とネトウヨの近現代史』(扶桑社新書、2020年)をどうぞ。その後の日本は、右と左で極端な分断が行われていきますが、端緒は民主党政権です。
なぜ「公約詐欺」と呼ばれるのか
民主党政権は、普段は政治にさほど注目していない無党派層の支持で誕生したのですが、その人たちを敵に回してしまいました。その無党派層は、地方よりも都市に多くいます。