実績や専門スキルは十分あるのに転職の面接がうまくいかない人はどこに問題があるのか。話し方コンサルタントの阿隅和美さんは「採用担当者の質問に対して、無意識に『いえ』『いや』など否定語をつけて回答する人がいます。こうした口ぐせがある方は、早めに改善しましょう」という――。
カジュアルなビジネス面談に臨む女性
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短時間で「人材としての価値」を伝えるには

実績や専門スキルは問題なく、書類選考は通るのに、面接で毎回落ちてしまう――。ミドル層の転職希望者の中には少なからずそういうタイプの人がいます。

企業側はミドル層に対して、「専門性・スキル」だけでなく、新しい職場の風土に慣れてうまくやっていく「柔軟性」や「謙虚さ」、そしてマネジメントやリーダーシップに欠かせない「コミュニケーション力」など、付加価値もあわせて求めています。書類で確認できる専門性やスキル、実績以外のそうした部分を、面接での話し方や受け答えを通じて見極めようとしているのです。

面接は初対面の担当者に短時間で自身の「人材としての価値」を分かってもらう場面。もし価値を伝えきれずにチャンスを逃していたらもったいないですね。そこで今回は、転職面接で落とされる人の話し方の特徴を切り口に、面接での効果的な話し方と人材としての価値の伝え方について取り上げます。

転職面接で落とされる人の話し方の特徴3つ

①頼りない印象を与える話し方・態度

転職面接では、本人が思っている以上に、話し方の印象が与える影響は大きいものです。

Nさんは、15年間勤務している食品メーカーの広報部で、インターネットを活用した広報・PR戦略で大きな実績を作ってきました。この実績を買われて、広報部長職として転職がほぼ決まりかけていました。

しかし、役員面接の前で待ったがかかりました。転職エージェントによると、転職先の企業が、面接でのNさんの受け答えに自信のなさそうな印象を持ち、部門トップのポジションに不安を感じているということでした。ただ実績は申し分なく、欲しい人材というのは確かなので、最終面接でOKが出るように話し方を改善してほしいというフィードバックでした。

実際のNさんはリーダーシップを発揮し、周囲を巻き込んでプロジェクトを推進する能力があります。しかし、面接は新卒のときの就活以来のこと。思いがけず緊張をしてしまい、声は小さく、表情も固く、視線も泳いでしまったそうです。どんなに優秀な方でも、面接で声が小さいと意志の強さが伝わりませんし、表情が暗くてアイコンタクトが取れないと、マネジメント層にふさわしいコミュニケーション能力があるのかと疑念を持たれてしまいます。

Nさんは、こうしたネガティブな印象を与えていた話し方を改善して臨んだ役員面接で、見事部長職での採用を勝ち取りました。企業にとっても優秀な人材を得られたことは大きなメリットです。

この事例のように、面接での話し方に関するフィードバックをもらえることはまれだと思いますが、似たような理由で苦戦している人がかなりいるのが現実ではないでしょうか。そこで、もし面接に苦戦している場合、ぜひご自身の話し方を動画撮影して確認することをおすすめします。そして客観的に声の大きさ、滑舌、スピードなど必要な改善をしておきましょう。

また、非言語コミュニケーションも重要です。相手の目を見て話すかどうかを気にする担当者は意外と多く、見ていないとコミュニケーション能力が低いと思われマイナス評価となります。逆に、しっかり目を見て話せば「自信を持って発言している」「強い意志をもって発言している」と好印象になります。もし、目を見ると緊張するタイプの方は、相手の「鼻」を見て話してみましょう。

もうひとつ、表情の管理も大切です。本来であれば笑顔で話すことを心掛けたいところです。しかし、緊張で難しい場合には、第一印象を左右するあいさつは「笑顔」。採用担当者の話を聞く時には口角を上げておくことを最低限意識してください。