理由①金利が上昇すると政府の「借金」が増加
金利を上げられない・上げたくない事情は、政府、日銀、民間でそれぞれ異なります。
政府が金利上昇を望まないのは、金利が上がると政府の利払いが増えるからです。現在、日本政府は約1000兆円の債務を抱えており、先進国のなかでは突出した水準になっています。現時点において日銀はゼロ金利政策を継続しており、政府の利払いはごくわずかな水準に抑えられています。しかし、もし日銀が金利を引き上げた場合、話は大きく変わってきます。
日銀が金融政策を変更し、日本の長期金利が今の米国並み(2022年6月時点、約3.5%)に上昇した場合、理論上、日本政府の利払い費は26兆円ほど増加し、最終的には約35兆円となる計算です(償還費用が同じだった場合)。
国民の生活を守る予算も制約を受ける
日本政府の予算は年間約107兆円(2021年度一般会計)ですが、このうち税収でカバーできているのはわずか57兆円しかありません(図表1)。残りは、すべて国債という政府の借金で賄われています。金利が米国並みの水準に上昇すると、税収の半分以上が利払い費に消えてしまうことになり、これは消費税に換算すれば18%分にも相当する巨額なものです。
もしこうなってしまったら、際限なく国債を発行し続けない限り、医療や年金、防衛費といった、絶対に欠かすことができない予算さえも制約を受けてしまうでしょう。
日本政府が発行している国債の平均償還期間は約9年なので、利払い費が35兆円に達するには9年間の時間的猶予がありますが、その間に毎年、確実に予算が圧迫されていくのは間違いありません。これでは景気対策どころの話ではなくなりますから、政府は何としても金利を上げたくないというのがホンネだと思われます。