4月23日に故安倍晋三元首相の選挙区・山口4区で衆院補選が行われ、後継の自民候補が次点の立憲の候補にダブルスコアで大勝した。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「敗色濃厚な選挙区にも公認候補を立てたことは評価できる。野党第1党として、『自民1強』に閉塞感を抱いている有権者に選択肢を示すことが重要だろう」という――。
安倍事務所の閉鎖に合わせ、看板を下ろす安倍昭恵さん(左から3人目)=2022年12月28日午後、山口県下関市
写真=時事通信フォト
安倍事務所の閉鎖に合わせ、看板を下ろす安倍昭恵さん(左から3人目)=2022年12月28日午後、山口県下関市

結果は「補選全敗」でも立憲の戦い方は評価できる

最近の大型選挙の直後に起きるメディアの、特に野党に関する論調の傾向として、過剰なほどの「立憲下げ、維新上げ」がある。4月23日に投開票が行われた衆参5つの補欠選挙も同様だ。公認候補を擁立した3つの選挙でいずれも自民党候補に敗れた立憲。衆院和歌山1区補選で新人候補が自民党候補を破って初当選した維新と露骨に比較され「立憲下げ」のボルテージは上がる一方だ。「泉健太代表の責任論」をあおる向きもある。

「補選全敗」は事実なのだから、それを基に一定の立憲批判が盛り上がるのは、当然と言えば当然だろう。すでにこうした意見はうんざりするほどちまたに溢れているので、改めて繰り返すことはしない。ここでは少し別のことを指摘したいと思う。

実は筆者は、統一地方選を含めた今回の選挙全体について、立憲の戦いをそこそこ高く評価している。少なくとも、大敗を喫した昨夏の参院選に比べれば、ずっとましな選挙だった。2021年秋の衆院選で公示前議席を割り込み、有権者を失望させてから1年半。立憲は思いのほか早く「下げ止まった」とみる。

本来補選の結果だけでは全てを測れない

毎年(必要があれば)4月と10月に行われる統一補選は、その勝敗が永田町の「空気」をつくり、時には政治状況を動かしてしまう。直近の例で言えば、一昨年の2021年春の衆院2補選と参院広島再選挙がある。3つの選挙で自民党は野党系候補に全敗。衆院の任期満了が半年後に迫るなか、自民党内に危機感が高まり、当時の菅義偉首相は衆院選を待たずに退陣に追い込まれた。

とはいえ、統一補選は「どの選挙区で発生するか」によって、勝敗の印象が大きく変わる。全国一律で行われる衆院選や参院選と違い、勝因も敗因もそれぞれの地域事情で大きく異なる。だから、補選の結果だけで政党の課題を全て俯瞰するのは、本来はやや無理がある。

それを踏まえた上で、思うところを記したい。