結果は自民候補がダブルスコアで勝利だったが…

しかし、公示段階でまだ安倍氏が存命だった昨年夏の参院選で、立憲は安倍氏の秘書だった秋山賢治氏を擁立し「安倍王国」に挑んだ。敗れはしたものの、秋山氏はその後、今年2月の下関市議選に初当選。こうした動きの積み重ねのなかで、今回、有田氏を迎え入れる土壌ができていたのかもしれない。

選挙戦で有田氏は、積極的に選挙区を回り、市井の人々の声に耳を傾けるとともに「山口の皆さんの生活は本当に豊かになったのか」「立憲民主党が目指す『支え合う社会』が必要だ」と訴えた。「よく選挙に出てくれた」「ありがとうございました」。陣営にはそんな声が多く届いたという。

選挙結果は、安倍氏の後継候補である自民党の新人、吉田真次氏が5万1961票で大勝。有田氏は2万5595票と、ほぼダブルスコアでの敗退だった。

安倍元首相の存命時と比べ着実に差は縮まった

しかし、自民党の吉田陣営は、安倍氏が2021年衆院選で獲得した約8万票を目標にしていたにもかかわらず、投票率の大幅な低下も相まって、約3万票も得票を激減させた。実際の勝敗は勝敗として、自民党もさすがに、こういう結果を手放しで「大勝利」とは呼べないだろう。

有田氏は敗戦の弁で「保守王国と言われてきた山口4区において、それが溶け始めてきている、と確信を持っている」と語った。

安倍晋三氏の選挙ポスター・京都の路地にて(2014年)
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有田氏が選挙戦で、旧統一教会問題に焦点を当てようとしたのは間違いない。だが、それ以上に伝えたかったのは「戦わなければ状況を打開できない」ということではないだろうか。

選挙は戦いだ。正しいことを気持ち良く訴えていれば、いつか有権者に振り向いてもらえるなんて考えは甘い。政権とは「戦って勝ち取るもの」であり、勝ち取った後こそが本当の勝負なのだ。

有田氏は自らの選挙戦を通じて、同党の特に若い世代に対し、体を張ってそのことを伝えようとしたのだと思う。