私もかつて派遣社員として働いていたことがあるが、派遣社員は疎外されることに対し、周囲が考えている以上に敏感だ。特に「派遣さん」という呼ばれ方は一線を引かれているようで心が萎えた。マネジャーは差別的な行動が生じることのないよう、職場の風土づくりに配慮したほうがいいだろう。

業務の種類によっては、「一線を引く」必要もあるだろう。その際は、派遣社員に対して、「なにが違うのか」を明示することが大切になる。スポーツ施設を運営するある企業で、派遣社員に店長を任せた。当初は「責任の重い仕事はやりたくない」と首を横に振ったが、あらためて「報酬はいくら」「クレームは本社が担当する」など、正社員との違いをはっきりさせたうえで要請した。結果的にその派遣社員は店長職を引き受け、運営は成功を収めたという。職種によって情報格差をつくってしまうと、「自分は派遣だから信用されていない」という不信感が生まれてしまう。可能な限り情報を開示することが、職場の一体感をつくる助けになる。

もし派遣社員には開示できない情報がある場合は、その理由を説明し、情報共有できない旨を伝え、素直に謝ることだ。同時に正社員に対しても、情報開示の度合いを伝える。正社員には「派遣社員にはできない仕事なので、しっかりやってください」というメッセージにもなる。

派遣社員への指導はセンシティブで難しい部分がある。しかしそこで成功できれば、その体験は正社員にも応用できる。マネジメントの基礎体力を磨く貴重な場であることも、理解しておくべきだ。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=鈴木 工)
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