ソ連製だから予備のパーツがない
ミサイルシステムに修復が利かない点も問題となっている。同局によると、ウクライナ航空司令部のユーリー・イグナット報道官は、「結局のところ、(仮に)こうしたシステムが破壊されたり故障したりした際、われわれには予備のパーツがないのです」と述べている。
「なぜならこれらの装備は、ミサイルと同様、すべてロシアで生産されているからです」
米ニュースメディアのニュージーも、同報道官による説明を取り上げている。それによるとロシアは、イラン製のドローンを大量に放つことで、ウクライナのミサイル在庫の枯渇を図っているという。
さらに報道官は、兵器の多くは旧ソ連やロシア製であり、「旧ソ連製の装備は壊れるのです」と課題を挙げた。在庫が枯渇するだけでなく、故障した際にスペアパーツの調達先が存在しないことが問題になっているようだ。
ウクライナは「防空システムの動物園」になっている
兵器在庫の枯渇を避け防空網を維持すべく、ウクライナは西側システムへの切り替えを図っている。だが、現状は旧ソ連時代の装備と混在しており、むしろ混乱の原因となっている。
米技術解説サイトのポピュラー・メカニクスは、ウクライナに西側諸国から寄贈された兵器が集まり、「防空システムの『動物園』」になっていると指摘する。スティンガーなど携行型の兵器を除いても、防空システムだけでこれまでに12種類が西側から供与された。
同記事は、「ロシアによるウクライナの都市への長距離ミサイル攻撃は、ウクライナの防空システム在庫をめぐる消耗戦の様相を呈している」と述べ、西側による武器供与の意義を認めている。検知から射出までを5秒で完了できるフランス製クロタルNG対空ミサイルシステムなど、幾分近代的な装置が供与されている。
しかし、多種多様な機材がウクライナに寄せられることで、ウクライナ軍は「持続性、相互運用性、人材育成の観点から課題に直面している」とも指摘する。
タイム誌も同様に、ノルウェーとアメリカが開発したNASAMS対空ミサイルシステムやドイツのIRIS-T短距離防空システム、そしてアメリカのパトリオット地対空ミサイルシステムなど、多様な防空システムがウクライナに集いつつあると報じている。
だが、RUSIのコーシャル研究員は同誌に対し、各システムの供与の数が限定的であることが課題になっていると述べる。氏はさらに、「訓練面での相当な負担」が生じているとも述べ、防空システムの供与によって新たな問題が持ち上がっていると指摘した。