小学校高学年に農業経営を知ってほしい

施設では、実際に露地栽培と屋内の施設栽培のエリアとがあり、最新の農業技術の一端に触れることができる。さらにこの施設がユニークなのは、食と農業の未来を見据えて、農業経営の視点を持ち込んだことだ。野上さんが、施設の概要を説明する。

「Fビレッジですので、野球ファン、観光客、インバウンドの方々など、さまざまなお客さまがいらっしゃると思いますが、メインターゲットには小学校の高学年を考えています。

まず、シアターで食と農業の素晴らしさ、農業に関わるさまざまな社会環境課題をお伝えしたうえで、メインの展示体験エリアでは、農業経営を実際に体験するゲームをやっていただきます。ゲームをやるなかで、これからの農業のあり方のひとつとして、また、社会環境課題の解決策として最先端農業、未来の農業があることを理解していただく。その後に、最先端の農業技術を見学する。そんなプログラムになっています」

農業学習施設
写真提供=㈱クボタ
農業学習施設。最先端の農業技術から農業経営まで、子どもたちに伝えることをコンセプトにしている

「私自身、農業に対するイメージが変わりました」

農業経営の視点を、消費者も含めたみんなに持ってもらうことで、これからの農業に対するイメージが変わってくる可能性があると柳原さんはいう。

能勢剛『「しあわせな空間」をつくろう。 乃村工藝社の一所懸命な人たち』(日経BPコンサルティング)
能勢剛『「しあわせな空間」をつくろう。 乃村工藝社の一所懸命な人たち』(日経BPコンサルティング)

「このプロジェクトをきっかけに、農業のことを私なりに勉強したんですけれど、強い意志を持って面白いチャレンジをしている農家さんがいたり、農家さんがつくった野菜を消費者に届けるのに新しい取り組みを工夫している方がいたり、いろいろな方々が新しいチャレンジをしているんですね。新しい食と農の世界をつくっていこうとしているのに触れることで、私自身、農業に対するイメージが変わりました。

その上で農業を経営する視点が持てると、みなさんの農業に対するイメージも大きく変わるなという気持ちがありました。それで、農業経営をテーマにしたゲームができないかなと、クボタさんと話しながら具体化していきました。実際にゲームをつくるのは、死ぬほど大変なんですけど(笑)」

この農業学習施設には、北海道大学も参画。無人トラクターなど、北大が得意とするスマート農業技術の運用実験などで連携していく計画だ。