仕事がデキる人は相手の時間を奪わない

⑧仕事がデキる人のメールの文章ってどんなの?

ビジネスの場においては、相手に文意を理解するための余計な作業を発生させない、相手の時間を奪わないのが「デキる人の文章」です。これは以下のようなポイントを踏まえている必要があります。

・要件を先に書いている。
・5W1Hが明らかである。
・客観的事実と個人的な意見を分けて書いている。
・自分が相手におこなってほしいことを明確に伝えている。
・文法の誤りや誤字脱字がない(特に相手の氏名やキーとなる商品名などを間違えていない)。

他に「相手をイラッとさせない」ことも重要です。イラッとさせると、そのぶん相手の時間を奪うことになるからです。

多数のメールが行き交うイメージ
写真=iStock.com/anyaberkut
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突然の“自分語り”は相手をイラつかせるだけ

⑨じゃあ、相手をイラッとさせるメールの文章って?

一言で言えば「相手との距離感がおかしい文章」です。一例としては、なかなか本題に入らずに「自分語りや個人的な主張の開示」をおこなう文章が挙げられます。

たとえば、私の本業は中国報道に携わるライターなのですが、仕事やインタビューの依頼をおこなうための初回の連絡なのに、冒頭から「自分が30年前に中国に旅行した時のエピソード」や「自分が考える中国の本質」といった内容をやたらに語るメールを送ってくる人がいます。これは新聞社や出版社のような「文章のプロ」とされる業界で働く人でも、年配者を中心にみられることがあります

しかし、ベテランの外交官の経験談や研究者の精緻な分析ならともかく、一般人が大学時代に一人旅をしたエピソードは、(ご本人には大切な思い出だと思いますが)通常は情報としての価値はありません。こちらは「さっさと本題に入ってくれよ」とイライラするだけです。ほかにも、聞かれてもいないのにビジネスの場で自分の過去の話や家庭の話を延々と述べるようなメールは、多くの場合は相手に嫌がられます。

ほか、「●●をやっといてください」「××じゃないですか?」といった、“バイト敬語“的な表現は、通常は相手にぞんざいな印象を与えてしまいます。年下の相手を「君付け」「ちゃん付け」で呼ぶのも論外でしょう(信じられない話ですが、たまにそういうメールを受け取ります)。たとえ相手と面識があって、かなり仲が良い関係であるつもりでも、相手の許可がない限りは避けてください。いずれも、相手との距離感を間違えているわけです。

もっとも、すでに何度も面識があり対等の関係である相手に、慇懃無礼だったりビジネスライクすぎたりする言葉づかいをすると、かえって不快感を持たれることもあります。このあたりのさじ加減は、他者に自分の文面を見せ、指摘してもらいながら学ぶしかないでしょう(ただし、情報漏洩はしないように……)。

余談ながら、あまり関係を深めたくない人に向けてメールを送る場合、相手の名前を意図的に誤記したり「ぞんざいな文体」を故意に使ったりすることで不快感を与え、自分と距離を置いてもらうという、京都の老舗さながらの意地の悪いテクニックもあります。