ユーモアはあるが、短気でイライラしやすい
しかし、つい感情的になってしまう性格は変わらないようだ。
2005年にはBBCの王室特派員からのインタビューを受けた際、「あの男(特派員)には耐えられない」と、激昂していたのが録音されてしまった。
そして女王崩御後、北アイルランド訪問時の“イラっと”シーンも記憶に新しい。来客名簿にサインをしたが、訪問の日付を間違えたり、インク漏れがあったり。それが気に障ってか、テレビカメラが入っているにもかかわらず、「もううんざりだ!」とカミラ妃にあたり散らした。強行スケジュールの訪問で疲れていたのだろうという同情の声も多かったが、このシーンはすぐに世界中に拡散されてしまう。
それでもイギリス人らしいユーモアを忘れないのはさすが。後日訪問先の市民からちゃんとインクが入っているペンを「Just in case(念のためです)」と渡されて、国王は照れ笑いしながら受け取った。別の署名シーンでは、「こういうのは気分のムラが出るよね」とカミラ妃に語っていたとか。イギリス人にとって自虐気味のジョークは欠かせない。すぐにイライラするのはよくないが、失敗をリカバリーできる術が備わっているのならば、問題なさそうだ。
ワーカホリックでついてこられないスタッフにイライラ
英国王室のシニアメンバー(高位王族)は誰もが働き者だ。存命だった頃の女王やフィリップ王配はもちろん、女王の一人娘のアン王女は数多くの公務をこなしている。しかしワーカホリックで言えば、国王がダントツ。皇太子時代からあまりのハードワークぶりに、彼が当時住んでいたクラレンスハウスのスタッフたちに恐れられていたという(出展:『Courtiers: The Hidden Power Behind The Crown』バレンタイン・ロウ著)。ロウ氏の著作によると、チャールズ皇太子は週7日、朝から晩までほとんど休みなく働き、かつ仕事のペースが早い。しかもスタッフにも同様の仕事ぶりを要求するが、国王のスピード感についていけない。それに対して腹を立てたチャールズは、イライラしたり怒ったりするわけだが……。しかしタチの悪い怒りではないそう。瞬間湯沸かし器のように怒りのレベルがあがるが、すぐ収まってしまう。つまりスタッフに対してネチネチと怒り続けるわけではない。
彼の怒りの矛先は、たいていメディアだったらしい。
2022年公開されたドキュメンタリー映画『プリンセス・ダイアナ』では、いつでもどこでもメディアに狙われていることに「正気を失いそうだ」ともコメントしている。こんな状態で心身は大丈夫なのか、彼の治世は短いのではと心配になってしまう。
しかし、前出の塩田さんはこう断言する。
「彼の心身は頑健です。父母が90代後半まで、祖母のクイーンマザーは100歳を超える長寿を誇りました。そのせいか、チャールズ国王が病気をしたというニュースを聞いたことがないです。きっと長生きするでしょうから、彼の治世はそんなに短くないと思います」
世間から散々バッシングを浴びたにもかかわらず、不倫相手のカミラ妃との愛を貫き、ついに彼女と結婚もした。強い意志と心臓の持ち主といってもいい。そしていつも傍には夫の操縦を心得たカミラ妃が寄り添っている。だから心身の健康面はそれほど問題なさそうだ。健康で長く生きることも、良い君主の条件なのだ。