自動列車運転装置は赤字路線への救済措置になるか

利用者が少なくなった鉄道は、赤字路線(鉄道を運行するために使うお金のほうが、運賃などで入ってくるお金より多い状態の路線のこと)になります。経営が難しくなった場合には、鉄道会社は赤字路線の廃線を決断することもあります。

こうした赤字路線は、地方にたくさん存在しています。利用者が少なくなっても、毎日の通勤や通学などでその路線を使う人がいるので、廃線になった場合は利用者にとっては大問題です。

「赤字で苦しむ地方路線を救ってくれるかもしれない」と期待されているのが、列車の自動運転です。自動運転だと運転士が必要ないので人件費(給料など、会社が従業員に支払うお金)をおさえることができて、赤字を減らすことができます。

人間の運転と自動運転で乗り心地はもはや変わらない

JR九州は、2019年に福岡市の近郊でATO(自動列車運転装置)の走行試験を行ないました。ATOとは列車の加速、減速、停止を自動的に行なえるシステムのことです。この走行試験では、運転士が乗った状態でATOによる運転時間や乗り心地がどういうものかを確認しました。その結果、人間の運転と変わらないATOの安全性が分かったのです。

日本は人口が減っているので、ますます地方路線の利用客は少なくなり、赤字路線が増えると予想されています。

そうした地方路線を廃線にせず、持続させるためにも、鉄道会社は自動運転の早期実現を目指しているのです。

ただ、赤字路線には線路や車両の保守整備の費用の問題もあり、自動運転だけでは万事解決ということにはならないかもしれません。無人運転化で節約できる費用は、全体で見ればごく一部。そのため、不採算路線の廃止を検討することは今後も重要です。