悲願の「早稲田大学医学部」は実現するのか
2022年9月、早稲田大総長に田中愛治さんが再選した。初めて総長選に立候補した2018年、「将来計画書」を発表し、大胆なヴィジョンを打ち出した。
「『世界で輝くWASEDA』を実現するためには、生命医科学の研究・教育を抜本的に拡充する必要があります。新たに医学部を本学が増設することは全国医学部長病院長会議の承認が必要なため、ほぼ不可能と言われています。したがって、実行可能性を見極めつつも、単科医科大学を吸収合併する戦略に絞って考えていく必要があります」
早稲田大医学部の構想はまだ見えてこない。これまで日本医科大、東京女子医科大など見合い相手が取り沙汰された。最近では聖マリアンナ医科大の名前も挙がっている。だが、話は進まない。論文数、研究費がものを言う世界ランキングで慶應に勝つためには医学部が必要となる。大学創立者、大隈重信の存命時代から医学部設置は長年の夢である。
2020年代中にその兆しが見えるか。東京医科歯科大と東京工業大が統合し、東京科学大の誕生は、国から年間数百億円単位の支援を受けられる「国際卓越研究大学」の認定をめざす、という双方の利害の一致によってとんとん拍子に進んだ。早稲田大も資金がほしい。
「東京医科歯科工業大」が、早稲田大医学部設置に向けた追い風になるかもしれない。
「慶應義塾大歯学部」の設立は決まったが…
世界の大学ランキングにおいて、早慶MARCHのなかでは慶應義塾大がトップを続けている。とはいっても順位は低い。2019年から2021年まで、いずれも601位から800位だった(早稲田大は2021年に、立教大は2020年から801位〜1000位。ほかは1000位以下。「Times Higher Education」各年版)。しかし、慶應義塾大は「国際卓越研究大学」を狙える要素は兼ね備えている。医、看護医療、薬の3学部がそろい、さらに歯学部まで加わろうとしているからだ。
2023年、慶應義塾大が東京歯科大学と法人合併することが、2020年に双方の大学から発表された。これで、医師、看護師、薬剤師そして歯科医師を養成する医療系総合大学の顔を持てば、研究機関として論文生産、研究費獲得を期待できる。
ところが、予定どおりにはいかない。合併は延期となり、慶應義塾大歯学部はしばらくお預けとなった。その理由について、両校はこう説明する。
「今般の新型コロナウイルスは、これまでの想定を遥かに超えた未曾有ともいえる危機的状況を社会にもたらし、教育・研究・医療を取り巻く環境は大きな変化を余儀なくされ、今後の状況も不透明で不確実なものとなっています。こうした現況下にあって、慶應義塾と東京歯科大学は、当初協議開始の時点で目途としていたスケジュールを見直し、特に目途を設けずに協議を継続することといたしました」(慶應義塾のウェブサイト)