戦闘が長期化することは必至

そして実際、3月末のイスタンブールでの停戦協議では実質的な前進が伝えられたものの、直後にブチャの惨状が明らかになり、交渉機運は急速にしぼむことになった。その後も停戦協議はオンラインで断続的におこなわれたようだが、ほとんど表に出てこなくなった。

鶴岡路人『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(新潮選書)
鶴岡路人『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(新潮選書)

ロシア側もその後は特に東部における支配地域拡大に重点を移すことになった。

それではウクライナは自らの力でロシア軍を追い出すことができるのか。

これが最大の問題である。ゼレンスキー大統領は、2022年4月23日の会見で、ロシア軍が「入り込むところすべて、彼らが占領するものすべて、私たちはすべて取り戻す」と強調した。停戦よりも、ロシア軍を追い出すことが先決なのである。

戦争による犠牲が日々積み重なっていくことを考えれば、早期終戦が望ましいこと自体は変わらない。

しかし、軍事的にウクライナが勝利する早期決着は現実には想定し得ない。そうだとすれば、ウクライナには、抵抗を続け、少しでもロシア軍の占領地域を縮小していくほかなく、NATO諸国を中心とする国際社会は、武器の供与などを通じてそれを支えていくということになる。停戦を唱えるのみでは平和は実現しないのである。

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