定年後の働き方を豊かにするためには、なるべく早くから準備を始めるに越したことはありません。私がインタビューをした方で、グローバルメーカー在職中の56歳で美容師資格をとり、58歳で早期退職し転身された人がいます。50歳頃から第二の人生は人の役に立ちたいと考えていたようです。

50代のうちに準備すべき2つのこと

さて問題は、定年後に何をするか。「あなたのやりたいことはなんですか?」と聞かれて、あなたはすぐに答えられますか? これまで会社が求める仕事で成果を上げてきた会社員にとって、「退職後は好きな仕事をしていいよ」といきなり言われても、何をしていいかわからないものです。普段からゴルフや映画、旅行などの趣味があればそれを活かす手もありますが、特にやりたいことがない場合は困ります。結局、会社員時代の仕事を続けるしかないと思う人もいるでしょう。もちろん、今ある専門スキルを活かして独立するのもいいと思います。

また、退職する前に会社のリスキリング制度を利用して学び、新たな分野で働くのも一手です。定年・退職後の労働時間は自由に決められますから、とにかく難しく考えず、やりたいことをマイペースで始めればいいんです。会社員でなければ、就業規則は自分ファースト。1日何時間働こうと、何曜日に休もうと、誰からも叱られません。年金に加えて退職金や企業年金基金があればなおさら、あくせくと働く必要はないでしょう。好きなことをマイペースで仕事にできるのが、定年後の働き方の魅力です。

まずは定年後に何をしたいかを決め、定年までの間、働きながら営業や企画、事務などを学んでいきましょう。会社は学びの宝庫。定年までしっかり学び尽くし、使い倒しましょう。定年までの間を定年後の人生の準備期間だと思えば、役職を解かれ平社員になり、実務をするのも楽しくなります。むしろ、独立後の幸せなキャリアに直結するわけですから、これまでよりさらに自分ごととして仕事ができるかもしれません。

準備として、最後に私からお勧めしておきたいことが2つあります。1つは、営業経験がない人は退職までの間に営業を経験しておくこと。のちに独立や開業をすると、新規客は自分で見つけなければいけないからです。今まで管理職として指示命令をしてきた自分が自ら営業するなんて……とプライドが許さない人もいるかもしれませんが、定年後に会社の看板がなくなったら、もう肩書は通用しません。

もう1つ、会社村から脱出して仕事以外の新たなコミュニティをつくり、肩書など関係ない、一個人として付き合える人間関係をつくりましょう。共通の趣味を持つ友達、資格受験や学びの友達、セミナー参加、商工会議所、同窓会などで得た新たなコミュニティが、定年後の心強い仲間になり、孤独な時間をなくしてくれます。

幸せな第二の人生の扉は、もう目の前にあるのです!

どうする!? 役職定年との向き合い方
(構成=力武亜矢 図版作成=大橋昭一 イラスト=前田はんきち)
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