「理想」ではなく親子関係が症状の原因

――「自分の理想」ではなく親子関係が影響するのが、子どもの拒食症なんですね。

【成田】もちろん「クラスメイトからのいじめ」といった表層的なきっかけもあるのですが、その深層には母子分離不安があることがほとんどです。

要するに、母子間の愛着形成がうまくいっていないのですが、親御さんとしてはむしろ愛情をたくさん注いでいると思っている。そしてお子さんも、ママが好きで好きで仕方ないけれど、だからこそ「嫌われたくない」という不安を抱いてしまう。

お金があるからこそ子どもに無理させてしまう

――高学歴と完璧主義が子どもを追い詰めているんですね。

【成田】私の中では高学歴の大きな問題点として、高収入もあると思っています。経済的に余裕があると、子どもにお金をどんどんつぎ込んでしまうのです。

――小4の娘さんが拒食症になったルミさんも、大手企業に勤めていて高収入だからこそ、食のこだわりを徹底できたわけですもんね。

【成田】そうなんです。さらに、子どもにお金をかけすぎると、子どもにお金の価値を理解させられないだけでなく、親のほうも「子どもにこれだけお金をかけているのだから、見返りとして、いい大学やいい会社に入ってほしい」と期待するようになります。

お金があってもないふりをしたほうがいい

――高学歴でも子どもにお金をかけすぎなければ、子どもに負担をかけづらくなるのでしょうか。

成田奈緒子『高学歴親という病』(講談社+α新書)
成田奈緒子『高学歴親という病』(講談社+α新書)

【成田】本当にそうなんですよ。お金がない家の子どもは、小さいうちからお金の使い方も学んでいきますし、「できるだけ早く働いて、お母さんにお金を渡すね」と言っている子もいます。

実際、引きこもりになっていた高校生の娘さんは、高学歴のお父さんが精神疾患になってしまったことで家計の厳しさを知り、次の日にバイトの面接に行きました。5年ぐらい誰とも話していなかった子がレストランでの接客を急に始めて、最初のお給料を家計に入れたのです。

だからというわけではないのですが、アクシスに来てくださる親御さんには「あなたのご家庭はすごくお金持ちだと思いますが、お金がないふりをしたほうがいいですよ」と話しています。

(構成=佐々木ののか)
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