<上空の気球を撃墜するのは意外と難しい。穴を開けても萎まないし、燃えないし、弾も命中させにくい。そこで登場した「サイドワインダー」の性能とは:ニック・モドワネック>
戦闘機
写真=iStock.com/FuzzMartin
※写真はイメージです

米国防総省は1月12日、カナダとの国境に近くで未確認の飛行物体を撃墜したと発表した。ジョー・バイデン米大統領が米軍に対して、北米上空を飛行する物体の撃墜を命じたのは、過去10日間で4回目となる。

米軍が12日に撃墜したのは、ミシガン州にあるヒューロン湖の上空を飛行していた物体だ。ミシガン州選出のジャック・バーグマン下院議員(共和党)は、「八角形の構造物」がF16戦闘機によって撃墜されたと言及。米国防総省も、F16戦闘機が空対空ミサイル「AIM-9X(サイドワインダー)」で撃墜したことを確認した。同ミサイルは世界最高の空対空ミサイルといわれ、1発あたりの価格は最高47万2000ドルとされている。

これに先立ち10日にはアラスカ北部上空で、11日にはカナダ北部のユーコン準州上空で未確認の飛行物体が撃墜された。この2つとヒューロン湖上空で撃墜された飛行物体はいずれも、2月4日にサウスカロライナ州沖で撃墜された中国の気球よりも小さく、飛行高度もずっと低かった。

米ジョージタウン大学外交大学院で国際政治・安全保障プログラムの共同議長を務めるジョディ・ビットリ教授は本誌に対し、12日の飛行物体撃墜にサイドワインダーが使われたのは、パイロットにとって扱いやすいミサイルだからだと指摘した。

近距離から発射が可能

米シンクタンク「カーネギー国際平和財団」の非常勤研究員でもあるビットリは、「(サイドワインダーは)空対空ミサイルとしては比較的安価でもある」と述べた。「視程内射程(約37km以内の射程で使用され)のミサイルのため、パイロットが気球に接近し、標的を目視で確認した上で比較的近い距離から発射して、標的に命中したことを確認することができる」

また発射前に標的をロックして自動追尾することができるため、気球の熱源があまり高温ではない場合でも、標的を特定することが可能だ。

サイドワインダーの発射には、ウクライナでの戦争で有名になった高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)を使うこともできるが、ジェット戦闘機を使用したことも、より理にかなっていると彼女は述べた。

「空対空ミサイルは、空中の標的を捉えて排除するように作られている」と彼女は述べる。「ハイマースは、空中ではなく地上にある標的を攻撃するように作られたミサイルシステムだ。どちらもミサイルだからといって、互換性がある訳ではない」