環境のせいで認識がゆがむ

いじめであれば、虐待や家庭内暴力がこれにあたります。親から虐待を受けていた、また自分でなくても、きょうだいがされているのを見てきた、あるいは父親が母親を殴っているところを見ていた。本人にとっては日常的なことなので、本当は間違っていること、いけないことであっても、「絶対にやってはいけないことなのだ」という認識がゆがんでしまうのです。

パワハラも同じです。自分や周りの人がかつて、パワハラ的な指導を受けてきたが、その時には、それがパワハラであり良くないことであるという認識が周囲になく、それがよしとされる会社風土があった。このため、自分が部下にパワハラをしても、「自分がかつて受けたり見たりしてきたのはパワハラではないから、自分が今やっていることもパワハラではない」と考えてしまうのです。

ですから、昔から社内風土としてパワハラ的な指導が存在した会社は、加害者を生みやすいといえるでしょう。

3つのリスクが行為に向かわせる

文部科学省の研究機関、国立教育政策研究所では、子どもをいじめの加害に向かわせやすくする要因を3つ挙げています。いじめのリスク要因として挙げられていますが、ハラスメントについても当てはまります。

1つ目は「友人ストレッサー」です。これは、友人や後輩に対して“ウザく”感じる度合いです。友人とはいえ、いつも自分と同じ価値観でいるわけではなく、時には相手に合わせてこちらが我慢することもあります。こちらが我慢する頻度が増えたり、価値観のギャップが大きくなったりすると、今まで仲がよかったとしても、急にウザく感じるようになったりして、攻撃的な行動につながりやすくなります。

会社の人間関係に当てはめると、「ふだんは気の利く後輩だけど、場を盛り上げるときに人のプライベートをネタにするから、ちょっとウザい」「こちらが話しているときに、いつもスマホを触っていてイラっとする」などが該当するでしょう。

2つ目は、「競争的価値観」で、自分はいつも勝負に勝たなければいけないと思っているかどうかです。プライドの高い人が持ちやすい価値観ですが、これが強いと、たとえば後輩や部下がいい成績を上げて褒められているのを見ると、ストレスになって、いじめやハラスメントなどの行為につながってしまいます。

3つ目の「不機嫌/怒り/ストレス」は、イライラの度合いです。会社や仕事だけでなく、夫婦げんかなど家庭内でもイライラすることがあると、その矛先はどうしても弱い人に向かいやすくなります。

オフィスで大きなアクションで議論する男女のシルエット
写真=iStock.com/XiXinXing
※写真はイメージです