「俺の話を聞け」おじさんの心理とは

【朱】聞く力がたとえばどう活きてくるかというと、哲学カフェを実践している友人から話を聞くと、いわゆるマンスプレイニングおじさんというか、「俺の話を聞け」というタイプの方がいらっしゃって、場を制圧することがあるんですね。哲学カフェは、「聞きますよ、話してください」という基本ルールがあるから、そういう説明したがる人の言動にもお墨付きを与えてしまう側面がある。だから、隣の研究室にいた僕は、複雑な思いで見ていたところがあるんです。

谷川嘉浩、朱喜哲、杉谷和哉『ネガティヴ・ケイパビリティで生きる』(さくら舎)
谷川嘉浩、朱喜哲、杉谷和哉『ネガティヴ・ケイパビリティで生きる』(さくら舎)

で、話を本題に戻すと、長年哲学カフェのファシリテーターをしていた友人で、大阪大学の臨床哲学者である鈴木径一郎さんによると、そういう方がなんで同じ話を何度もするかというと、「話を聞いてもらえてない」と思ってるんですって。

自分が言ってるのにみんなが「またか……」という顔をしていたり、話題もなんか流されたりして、自分の話を聞いてもらえていないと思っているから、もう一回説明しなきゃという風になる。だから、必ずしも怒っているわけではなくて、まだ聞いてもらっていないからしゃべらなきゃ、言わなきゃと。

つまり、相手に伝わるような仕方で聞いているよという姿勢が取れたとき、その方は、抑圧的で一方的な説明ではなくて、その場で会話のやりとりを回してくれるようになるということだそうで。

【谷川】聞く力は意識的に養う必要があるのかもしれない。聞くことは、ネガティヴ・ケイパビリティの一つの表現と言えるのかも。

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