これまで培った需要予測が使えない緊急事態
つまり特急は稼げるが、イニシャルコスト、ランニングコストがかかる。かつ、このコロナ禍で特急の乗客が大幅に減っていることからわかるように、経済の動向で乗客数が大きく変動する。
そもそも祝日が土日と併せて連休になる、ならないで乗客数は変わってくる。さらに上りを増やしすぎると下りが過剰に走るといった状況にもなってしまう。いかに手持ちの車両をうまく運用するかがむずかしく、普通列車に比べ需要予測が利益獲得のカギを握る。
需要予測は、1980年代に導入された予約業務を司るマルスというコンピュータシステムで劇的な進歩がなされた。その後、データは蓄積され、需要予測の精度は増すものの、いかんせんコロナ禍はあまりに不測の事態であった。それを踏まえて、ダイヤはどう変更されたのか。
観光に人気の特急踊り子は「最低限」に
観光に人気の特急踊り子を見てみよう。ちなみに、スーパービュー踊り子の後継となるサフィール踊り子が2020年3月のダイヤ改正から運行を開始している。タイミングが悪いデビューとなってしまったが、デビュー以来、1日の本数は定期列車と臨時列車が併せて2往復している。車両が2編成あるので、いずれも1日1往復させて、その日はお役御免というかたちだ。
ここで本数を減らすと、1編成がムダになってしまう。最低限の運用で走らせているというところか。ただし、ダイヤを増やそうとすると、選択肢は16時50分以降に東京駅を発車する便に限られる。
19時半の伊豆急下田駅着の便にどれだけ需要があるかというと、限られるだろう。予定通りの運行を粛々と重ねている状況なのであろう。
一方の特急踊り子は定期列車が1本減り、臨時列車は0本となった。コロナ禍前は臨時列車を8~9本走らせていたわけだから、いかに乗客の減少が著しいかがわかる。JR東日本にとっては最低限の本数を走らせている状況だろう。
ただ、JR東日本は、特急に関して単に本数を減らすだけでなく、発着駅を変えて集客を狙う動きもある。たとえば新宿駅発着の特急あずさ、特急かいじについて、一部を東京駅発着にして利便性の向上を狙っている。