幸いにしてわが娘は、まだ少しは私と言葉を交わしてくれるが、この先いったいどうなるのか。焦る気持ちで心理学者の植木理恵先生に教えを請うた。
「思春期の女の子って、『女になりたての女』なんですよ。ある意味、女であることに一番忠実な年代かもしれない。まずはそこをわかってあげないと」と、笑顔でさらっとおっしゃる。が、わたくし、女心ほど苦手なものはない。カミさんの本音すら感じ取れない男に、どうして娘の女心などわかるというのか。
「じゃあ、女心の話の前に、思春期ってどんな時期なのかというところから、復習しましょうか」と植木先生。
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「小学校の低学年くらいまでの子供を、ギャングエイジといいます。ギャングが集団で行動するように、この年代の子供たちは、ある集団に属しているということに喜びを感じます。家族の一員であるということがうれしいんです。だからお父さんのこともお母さんのことも大好きです。これに対して、思春期の子供たちをアイデンティファイエイジといいます。自分は何者かということを考えはじめ、自分や周囲の人々を客観視しはじめます。これは子供から大人へと成長する過程の大切なステップなんです。それに加えて女の子は体が変化しはじめます。初潮を迎え、胸もふくらみはじめます。体の変化は心の変化よりも先に現れるので、女の子自身焦りを感じて、気持ちが不安定になるのです」
なるほど。小さなことにイライラしたりするのは、そういうわけか。では、そんな扱いの難しい時期の娘に言ってはいけない言葉は何だろうか。
「アンケートを拝見すると、体のこと、容姿のことを口にして嫌われているお父さんが多いようですが、当然ですね。一番気にしていることを無神経に言われるんですから、この時期の女の子なら誰だって傷つくし、嫌な気分にもなりますよ」
そうか。小さいうちは「大きくなったね」は褒め言葉だけれど、お年頃の女性に言ったら「それって、太ったっていうこと?」ってとられかねないもんな。「父親を異性としてとらえるようになるのもこの時期。お父さんの中に異性を見るようになる。と同時に、お父さんには『男』ではなく、『私のお父さん』でいてほしいという気持ちがあります。だからお父さんが性の話をしたりすると、お父さんの中の『男』の部分に過剰に反応して嫌悪感を抱いてしまうんです」