2022年、コロナ禍で急減した出生数

2020年に始まったコロナ禍による人流抑制の副作用なのか、2021年の出生数81万人、2022年には77万人と、日本の少子化は年々深刻化している。

遠軽厚生病院も、2014年には約350件の分娩があったものの、2023年の求人募集では「約130件」と記載されており、地方の少子化は都市部以上に深刻だ。そして、「年130件の分娩に、年収約2000万円の産婦人科医2人確保」するならば、もはや、町が妊婦1人あたりに30万円の補助金を出して、臨月には、産婦人科医が比較的多い都市部の札幌などでホテル滞在してもらう、といった施策を採用したほうが確実かつ持続可能かもしれない。

おなかの大きい妊婦
写真=iStock.com/Nemer-T
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2024年働き方改革、2025年女医率上昇

2024年度から医師の「働き方改革」法案こと改正医療法が施行され、医師に対する時間外労働の上限が年960時間に規制され、違反者は懲役刑や罰金刑の可能性がある。ゆえに、365日24時間対応が必須の産科では、当直可能な常勤医を少なくとも3人を確保しなければならなくなった。

そして、2025年からは、東京医大騒動による医大入試改革の影響で医療現場の女医率が上昇することが確定している。女医増加のみならず、「女医を妻に持つ男性医師」も増加し、男性育休も普及し、一部の地方病院が今も期待する「従順な専業主婦妻を持ち、24時間体制で働く」昭和体質な男性医師は減る一方だろう。

やはり集約化しかない

「お産の安全性」や「産科医のワークライフバランス」を保ちつつ、減る一方の分娩に対応するには、やはり集約化しか解決法がない。これは筆者の意見であり、医師仲間や医療現場の総和と言っていい。

大胆な「選択と集中」によって貴重な産科医は、県庁所在地か地方中核都市に集め、臨月の妊婦が子連れ滞在できるような母子寮を設立するような方向で解決するのがベストではないか。妊婦検診は、地方病院の臨床検査技師と協力して、「遠隔地病院の産科医が超音波動画を配信してもらいつつ診断」するオンライン診断も検討すべきである。

遠軽町民には不本意だろうが、現在の産科常勤医の体力に限界がきたら、分娩取り扱いは終了せざるを得ない。

今後の方向性は、同様の地方自治体と連携して札幌市などに妊婦向け母子寮をつくり、緊急時の医療ヘリ輸送などを拡充するしかないだろう。少子化という国難を乗り越えるため、場合によっては、自衛隊などと医療機関が連携してもいい。実際、すでに沖縄離島や隠岐の島などでは「臨月になると島を出て本土で待機」制度が導入されているので、それらを参考にした制度の導入が求められている。

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