できるだけ少ないお金で楽しく暮らせる力

漠然とした恐怖が不安の正体なのであれば、漠然とした恐怖の姿が目に見えるまで、徹底的に浮き彫りにする作業が必要になります。

お金の不安というのは、考え方を変えるだけではどうにもならないと思います。というより、僕はどうにもなりませんでした。

僕はこれまでに何十冊と、人生哲学や心理学の本を読んできました。それで一時的に気分が落ち着くことはあっても、翌日布団から起き上がる頃にはまた不安を感じる。

図書館の机の上の本をクローズアップします。
写真=iStock.com/jovan_epn
※写真はイメージです

そんな日々の繰り返しでした。

だからこそ、お金の不安から解放され、やりたくない仕事を辞めるためには、圧倒的なリアリティー、つまりは安心できるだけの事実を手に入れる必要があります。

そして、その手に入れるべき事実とは、「できるだけ少ないお金でも楽しく暮らせるようになること」です。

自分の「生命維持コスト」はいくらか

普通の生活すらできなくなるという漠然とした恐怖を克服するには、最低限生きるためにいくらお金が必要なのかを見える化すること。これが最も重要になります。

ここでいっている「最低限」とは、本当に最低限です。

「娯楽がないとつまらない」とか、「コンビニでアイスくらいは食べたい」といった娯楽的な要素を一切排除し、最低限いくらあれば文化的な暮らしができるのかということです。

もっと具体的にいえば、次のような生活になります(図表1)。

「最低限の生活」の具体的イメージ

これらの支出を合算した金額が、最低限生きるために必要なコストになります。僕はこのコストを、「生命維持コスト」と呼んでいます。

この生命維持コストをえるだけのお金さえ稼げれば、本当に最低限ではありますが、「普通に」生きていくことはできます。この金額を自分の中で腹落ちさせることこそが、お金の不安から解放される大きな一歩になります。

おそらく、この金額をパッと即答できる人は1%もいません。

生活に不自由ないくらい稼いでいてもお金の不安が消えないのは、自分の生命維持コストを把握できていないからです。

これは言い換えれば、目の前の崖の下が真っ暗な状態のようなものです。底が真っ暗でなにも見えないからこそ、落ちたときに大怪我をする恐怖に怯えてしまいます。

そのため、お金はいくらでも必要だと感じてしまうわけです。