「逆らわず いつもニコニコ 従わず」
10年ほど前のことですが、プロ野球で使われている統一球が、公表されないまま、昨シーズンより飛ぶものに変更されていたというニュースがありました。
当時、日本野球機構は記者会見を開き、事務局の独断だったと説明しました。
加藤良三コミッショナーが「調整されていたことを全く知らなかった。不祥事を起こしたとは思っていない」と平然と言ってみせたのは、情けない光景でした。
現場の監督、選手らへの報告が一切ないまま、選手の評価を大きく左右するボールに手が加えられていたのです。選手会はレッドカードを突きつけました。
上司は、部下の過ちを受け止める人であること。その信頼があるから人がついてくるのです。
コミッショナーがほんとうに報告を受けていなかったのなら、さらに問題です。
部下は、コミッショナーに報告しても仕方がないと思っているわけですから。それに気づかず、言い逃れ発言をするのはやはり悲しいですね。
話すより聞く。威張るより笑う。
これが60代からの生き方でしょう。
「逆らわず いつもニコニコ 従わず」
これは、産婦人科医・昇幹夫さんが、著書の中で紹介していた言葉です。この言葉、いいですよね。
これを実践していたら、嫌われることはないし、自分を見失うこともありません。
60代からは好かれることが大事です。嫌われたら、孤独になるだけなのですから。
愛される60代をめざしましょう。
「ゆっくり力」で人とつき合う
20代、30代の若者も、いずれ誰もが歳をとります。
たとえば、かつて大ヒットしたドラマに『踊る大捜査線』があります。
織田裕二さん演じる「青島」という若い刑事とコンビを組むのは、今は亡き名優・いかりや長介さんが演じたベテラン刑事「和久さん」です。
暴走する青島刑事をたしなめ、指導していくのが和久さんの役目。この「若者と老人」の関係はある意味、鉄板ともいうべき名コンビの原型です。不滅の関係であり、仕事をする、人を育てるという意味でもなくてはならない関係といえます。
ベンチャー企業が倒産したり、モラルを逸脱したりするのは、じつは経営陣に「若者と老人」という関係への意識がないのも要因の一つだといわれています。
「老人力」などという表現もありますが、年配者の経験、知恵はほんものなのです。
人間とは補完し合う関係ではないでしょうか。
おたがい、足らないものを補い合う関係です。その典型が夫婦・男女ですが、「若者と老人」という関係も大いなる補完関係にあると思います。
老人は、歩みがゆっくりですが、その分、周りがよく見えます。たとえていえば各駅停車で景色を見ながら旅行をしているようなものです。若者は目的地に向かって新幹線や飛行機で行きたがります。最短で行くことも必要ですが、いろいろなところに配慮しながら進むことも、また必要なのです。
目的地に早く着いた若者が、ゆっくりやってくる老人を待つ――その時間がじつはいろいろなことを考えさせる、大切なものになるのではないでしょうか?
60代のゆっくり力には意味があると思います。