茶道はとても季節感を大切にします。
寒い季節(11月から4月)には炉に釜をかけて、お客様が少しでも温まるようにと考えます。暑い季節(5月から10月)には風炉に釜をかけて、お客様から離れたところで炭をおこし、暑くならないようにと心がけます。
釜をかける位置だけでも季節により違ってきますし、道具類やお花、お菓子、お点前なども、それぞれの季節を考えて、お客様に楽しんでいただけるような趣向になっています。
季節ごとのお茶会を開き、日本の四季を味わう
お正月には「初釜」というお茶会を開きます。
初釜は、年が明けて初めて釜に火を入れることを意味し、新年最初に行われるお茶会のことをいいます。
床の間には、初春にふさわしい掛け軸が飾られ、結び柳という天井から畳に流れるほどの長い柳で長寿を祝います。
お菓子も花びら餅という特別なものをいただきます。
白い丸餅の上に赤い菱形の薄い餅を重ね、その上に白味噌の餡、甘く煮たゴボウをのせて、半月型に包んだものです。
平安時代に長寿を祝うため、固いものを食べる新年の習わし「歯固めの儀式」があり、それを簡略化したものといわれています。
他にも、「節句の茶会」や「花見茶会」、「涼みの茶会」や「紅葉茶会」、「雪見茶会」など、季節ごとのお茶会を開き、日本の四季を味わい、楽しみます。
昨今、季節感がなくなったといわれておりますが、日本の伝統行事や季節を、お抹茶やお菓子と共に楽しんでいただけましたら、日々の生活が彩り深く、豊かになるのではないでしょうか。
日本の美意識「わび・さび」の本当の意味
外国人のお客様から「茶道の精神を教えてください」と問われることがあります。
外国人のほうが、茶道の精神性に魅了され感動される方が多いように感じます。
茶道の基本精神は「和敬清寂」という言葉で表され、「和やかな心、敬い合う心、清らかな心、動じない心」という意味があります。
茶道の修練によってその教えを心に刻み、人間として成長しようとする日本独特の道でもあります。
また、茶道は禅宗と深く関わり「わび・さび」という精神文化を生みだしました。侘び・寂びは日本の美意識の1つで、元々は別の意味を持ちます。
さびは時間の経過と共に色あせて劣化することで出てくる味わいや趣きある美しさをいいます。わびはさびの味わい深さを美しいと思う心や内面的な豊かさを表します。
両方が併さり、落ち着いて、静かで質素な、枯れたものから趣が感じられることをわび・さびといいます。
茶道においては、このわび・さびの精神を大切にしています。静かなお茶室で一椀のお抹茶を点てることにのみ集中することで心を落ち着かせ、自分自身と向き合い、精神を高めていきます。