原発立地の固定資産税は年20億円超

1人当たりのマイナス幅が最大で最も裕福という結果になったのは福島県双葉町で1374万円だった。3位の大熊町(1096万円)とともに、東日本大震災で事故を起こした福島第一原発が立地する。2町以外でも、6位の葛尾村(419万円)、11位の楢葉町(284万円)、12位の浪江町(255万円)など同原発周辺が上位に来ている。

事故後に国や東京電力から多額の復興費用や賠償金を得る一方、長らく帰還困難区域に指定され復興が進んでいないことが背景にある。避難した住民が戻らず人口が震災前から大きく減ったことも影響している。双葉町は住民票を残したまま避難している人を除いても、震災前と比べて約1500人(22%)減少している。

福島県以外でも、5位の北海道泊村(494万円)、8位の佐賀県玄海町(341万円)、9位の新潟県刈羽村(313万円)など原発立地自治体はどこも裕福だ。例えば泊村には1年を通してスケートができるアイスセンター「とまリンク」(村民の利用料は100円)があり、刈羽村には運動広場を含めて総工費64億円をかけた生涯学習センター「ラピカ」がある。

2021年度は、3町村とも国の電源立地交付金を10億円以上受け取っていたほか、電力会社からは多額の固定資産税が入ってくる。固定資産税収入はいずれも20億円以上あった。原発が止まっていても関係ない。

小泉政権下のトラウマ

2位の東京都青ヶ島村(1097万円)と4位の御蔵島村(676万円)は伊豆諸島の離島だ。どちらも本土から遠く、船かヘリコプターでしか上陸できない。人口も少なく、青ヶ島村はわずか170人と日本の自治体で最も少ない。めぼしい産業はなく小笠原諸島のような世界遺産でもないため、コツコツためてきた。

青ヶ島村総務課の担当者によると「職員定数削減や公債費の抑制で捻出した財源を基金に積み立てた。今後は財源不足や災害、渇水など不測の事態に備えるほか、大型の施設整備を予定している」そうだ。昨年4月時点の正職員数はわずか23人だった。

財政力の乏しい自治体が「貯蓄」に励むのは、2000年代前半の小泉政権時代に「三位一体改革」で痛い目に遭った記憶が残っているからであろう。税源移譲の一方で補助金や地方交付税を減らされ、厳しい財政運営を強いられた。麻生政権以降のここ15年ほどは民主党政権時代を含めて地方へのバラマキが拡大しているのだが、当時のトラウマから抜け出せていない。