ウクライナ侵攻を続けるロシアが、最新鋭の軍用機の一部について、ウクライナ上空に飛ぶのをためらっているという新たな分析が出た。
ロシア軍が2022年夏以降、ジェット戦闘機スホーイSu-57(NATO側のコードネームは重罪人を意味する「フェロン」)を、ウクライナ侵攻のために配備していることは「ほぼ間違いない」ものの、その飛行ミッションはロシア国内に限定されてきた可能性が高いと、イギリス国防省は1月9日に発表した最新の報告書で述べた。
代わりにロシア軍は、ロシア側から長距離ミサイルをウクライナに発射するためにSu-57を用いていると考えられるという。
このようにSu-57を国境の外に出さないという運用方針は、「ロシアの空軍運用に今回特徴的なリスク回避のアプローチを示すものだ」とし、ロシア政府はSu-57に用いられている技術がウクライナで危険にさらされる可能性を恐れていると見る。
「前線には成熟不足」
ロシア政府はまた、ステルス機能を持つこの最新鋭のジェット戦闘機に関して、自国空軍の評判が損なわれるような事態を避けたいようだと、英国防省は指摘する。
これに対しロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、ロシア軍がウクライナでこの戦闘機を「見事に」活用していると主張している。2022年8月には国営メディアに対し、Su-57はミサイル攻撃に加えて、「さまざまな防空システムに対する非常に高度な防御性能」を備えていると胸を張った。
イギリス国防省はSu-57を、「ロシア最新鋭の第5世代超音速ジェット戦闘機」と評している。ステルス性能を持ち、「非常に高度なアビオニクス(航空電子機器)を備えている」という。
ロシア国営メディアによると、Su-57の第1号機がロシア軍に引き渡されたのは、2020年のこと。
非営利の米政策シンクタンク、ランド研究所によると、1人乗りの双発ジェット機であるSu-57開発の意図は、アメリカ軍のF-35戦闘機に対抗する航空機の開発だったという。
イギリスの防衛関連シンクタンク、王立防衛安全保障研究所(RUSI)は2020年の分析で、Su-57について「前線兵器として信頼が置けるレベルまで成熟していない」としつつも、「可能性」を秘めたステルス戦闘機だとの見方を示していた。
2018年には、まだ開発段階だったものの、Su-57がシリア上空を飛行したことが記録されている。