「発達障害の人とか、それっぽい人が好き」

「『しおんにはこういう言い方をしてね』と主人に話しても、すぽっと記憶が抜け落ちるんです。何回話しても、初めて聞いたみたいな顔をする。それでしおんに対して、同じような怒り方をしてしまう。後藤先生に相談すると、おそらく発達障害だと思うから薬を試してみよう、と。これは漢方ではなく、発達障害に対する西洋の治療薬です。主人に服薬させると、劇的に効きました。よく話を聞いてみると、これまでも仕事で物忘れが多くて困っていたようで……。それが服薬によって思い出せるようになって仕事がスムーズに進むようになったそうです」

発達障害の人同士、無意識に惹かれあう面があるのかもしれない。夫婦で発達障害、同じ職場に発達障害の人が複数いる、というのはほかの取材でも聞いた。

良子さんも「発達障害の人とか、それっぽい人が好き」と明言する。

「ずっと会話が続くんです。なんの違和感もなく、気を使うこともなく。こっちが言ったことも理解してくれるし、向こうが言ったことも理解できる。話していて楽しい」

しおん君が描いている絵。「さく、え、しおん」と書かれている。
撮影=笹井恵里子
しおん君が描いている絵。「さく、え、しおん」と書かれている。

日本でも珍しい、新しいタイプの学童クラブ

さて私が良子さんと出会えたのは、「ドーユーラボ」という、沖縄県に設立された発達障害児が通う放課後等デイサービス(学童クラブ)を通してだった。ここは勉強だけでなく、児童の多彩な才能を開花させるため、ゲーム作りやプログラミングなどを指導するのが特徴だ。日本でも珍しい、そして新しいタイプの学童クラブといえる。

同施設は、沖縄県内に3カ所あり、最初に設立されたのは沖縄市比屋根(ひやごん)の「ドーユーラボ ひやごん」。2018年10月に開所した。ここに通っているのが、良子さんの息子であるしおん君だ。彼は見学で施設に入った瞬間、「ここがいい。またここに来たい」と口にしたという。学校を終えた後、ほぼ毎日のように通っているそうだ。良子さんへの取材も同施設で行い、しおん君が描いた作品も目にした。

そしてドーユーラボの創設者は、ゲームクリエイターとして著名な南雲玲生さんだ。南雲さんは2003年、株式会社ユードーを設立し、国内外でヒットアプリをリリースしてきた。音楽ゲーム「beatmania(ビートマニア)」や知らない人と会話できるアプリ「斉藤さん」など、国内外でヒット企画を連発してきた若者のカリスマだ。だが輝かしい経歴の裏で、彼もまた発達障害の当事者であり、その特性に長く苦しんでいた。次回は、その南雲さんの苦悩に迫る。

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