ネット上での「炎上」に、企業はどう対応するべきか。ブラック企業アナリストの新田龍さんは「迅速な対応ができれば、むしろ信頼獲得につながる場合もある。『ペヤングソースやきそば』の異物混入事件はその好例だろう」という――。

※本稿は、新田龍『炎上回避マニュアル』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

炎上の鎮静化には「過ちを認め改める」ことが重要

孔子の「論語」には、「過ち」について言及した箇所が多い。

中でももっとも有名なのは、「子曰、過而不改、是謂過矣。」(子いわく、過ちて改めざる、これを過ちという)との教えであろう。ご存知のとおり、「過ちを犯していながら改めないことが、本当の過ちである。過失はやむを得ないが、過ちと気づいたらすぐ改めよ」との意味である。

他にも同義の言葉として「過ちてはすなわち改むるに憚ることなかれ」といった教えがあったり、孔子がもっとも信頼していた弟子顔回を評価していたポイントが、「過ちをふたたびせず」(=同じ過ちを繰り返さない)であったりするなど、過失に気づき改めることの重要性を度々説いている。

本書では数多くの炎上失敗事例を取り上げているが、中には世間からの厳しい批判を浴び、一時的に危機的な状況に陥りながらも、着実な対処や迅速な対応、すなわち「過ちを改める」ことで事態を収拾し、早期の鎮静化を成功させたり、逆に信頼獲得に繋げたりしたケースも存在する。本稿では2つの事例から、炎上鎮静化のポイントをひもといていきたい。

ペヤング製造会社の「ゴキブリ混入事件」

まるか食品株式会社の事例

ロングセラーブランド「ペヤングソースやきそば」を製造・販売する「まるか食品株式会社」における異物混入事件は、初期対応のまずさから厳しい批判が寄せられたものの、事後対応の姿勢が結果的に支持されることに繋がったケースだ。

まるか食品は、1929年創業の、群馬県伊勢崎市に本社を置く老舗食品メーカー。主力商品である1975年発売のカップ焼きそば「ペヤングソースやきそば」は東日本を中心に高い知名度を誇り、長年にわたって販売されている。

2014年12月、カップ焼きそば購入客が、「ペヤングからゴキブリ出てきた」というメッセージとともに、麺の内部に虫の死骸とみられるものが入った写真をSNS上で公開。すぐに話題となって報道されることとなった。その際、発覚直後であり、まだ混入原因が特定できていない状況にもかかわらず、会社側は「製造過程での異物混入は考えられない」という主旨の文章をサイトに公開し、ネットメディアの取材に対しても「虫が混入していたという苦情も初めて」とコメント。製造過程での混入疑惑をかなり強気に否定していた。