脳の老化を防ぐにはどうすればいいか。医師の和田秀樹さんは「反骨精神を持ち自分の意見をはっきり言う人はボケない。101歳まで生きたむのたけじさんは『高齢』という言葉に怒り、生涯かくしゃくとしていた」という――。

※本稿は、和田秀樹『60歳から脳を整える』(リベラル文庫)の一部を再編集したものです。

カメラマンに向かって指をさす高齢者
写真=iStock.com/kali9
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「いい歳をして、わがままをいう」は悪なのか

長く会社勤めをしていると、人間関係に大切なのは協調性だと思うようになります。

とくに管理職になるとその傾向が強まります。

「あいつは仕事はそこそこできるけど、協調性がないからチームワークを乱してしまう」
「若い社員は自分のプランにいつまでもこだわる。みんなに合わせないと仕事が進まないじゃないか」

そんな不満を持ちますが、自分が若いころはどうだったかといえば、協調性があったとはいえません。まさに「自分のプランにこだわり」、やりたい仕事で結果が出せればそれで満足だったのです。

わたしたちはどうも、歳をとると自分の考えにこだわるより相手や周囲に合わせるのが大人だと思うようになってきます。「いい歳をして、わがままをいうのはみっともない」と考えます。

まして定年で仕事を退いてしまうと、「もう現役じゃないんだからあまり出しゃばらないようにしよう」と考えがちなのです。近所づき合いも無難にこなそうとするし、友人知人とも争わずに丸くつき合おうとします。

それはそれで、穏やかな定年生活ということになりますが、あんまり丸くなってしまうとなんだか隠居したみたいです。

それに感情が刺激されることもなくなります。

丸くなって怒ることもないんだからいいじゃないか、と思うかもしれませんが、それでほんとうに気が済むのかということです。まだ60代、仕事は一線から退いてもやってみたいことはいくらでもあります。

あるいは頭がしゃんとしているなら自分の意見も判断もあります。

それが相手や周囲とぶつかる場合も当然、あるはずです。

そこでもし、「へたに逆らっても気まずくなるだけだな」とか、「わたしが我慢すれば済む話だな」といった協調性にこだわってしまうと、結局はもやもやした感情だけが残ってしまいます。

これでは脳は欲求不満に陥りますね。

そしてもっと困るのは、人づき合いが面倒になることです。相手に合わせてばかりいると、あまり楽しくないし疲れてしまいます。