外交の世界では国家元首は平等

「唯一のエンペラー」でありながら、エリザベス女王の葬儀では特別扱いされなかったのはなぜか。

外交の世界では国家元首は平等で肩書きによる扱いの差はないが、君主が大統領より上位に扱われることはある。君主の間では、序列は就任順で決まるので、2019年5月即位の天皇陛下は、同年1月就任のマレーシアのアブドゥラ国王の次席と言うことになった。

王室外交では元国王も即位順に席次を与えられるので、エリザベス女王即位60年記念行事では、首席は1927年即位のミハイ・ルーマニア元国王で天皇陛下(現上皇)は第9位だった。

そうしたわけで、エンペラーだから上位だなんて言うことはないのだが、それでも日本の天皇が特別の存在として認識されているのも事実である。

天皇が「特別な存在」である3つの理由

第一は日本という国そのものに対する評価だ。中韓以外のほとんどの国において好感度が高く、それ以上に、世界11位の人口を誇り、世界第3位の経済大国だ。

そして、神武創業が紀元前660年かどうかはともかくとして、統一国家が成立してから千数百年にわたって同一家系が君主であることは、ヨーロッパ人的感覚では尊敬される。

ヨーロッパで最古は、9世紀に始まるデンマーク(少しあやふやな点あり)、ついでは英国で、それより古く、しかも、男系男子で一貫していることは、驚異と考えられている(王位を失った王家ではフランス王家は987年即位のユーグ・カペーから現在の当主であるジャン四世まで男系男子嫡出である)。

次に日本の皇室、あるいは歴代の天皇が文化的にも、道徳的にも評価されてきたのも反映されている。先の戦争は日本の皇室に対する評価を厳しいものにしたが、昭和天皇が日本の民主化と平和国家としての発展、西側諸国との同盟に前向きな役割を果たされたことや、威厳で世界から尊敬される地位を回復された。

また、上皇陛下が国内のみならず海外にも頻繁に出かけられ、各国の人々とも海外の王室ともストイックに交流を深められたことも良かった。とくに天安門事件直後の訪中については賛否の議論があるが、あの時期の訪問だったからこそ、中国政府が日本の皇室に好意的な立場をとりやすくした。