食品をPB商品に切り替え、照明をこまめに消し、風呂の残り湯を洗濯に回し、ビールを発泡酒に。そんなこんなで節約できた小銭は月3000円。これで祝杯を挙げてしまっては一発逆転も何もない。かといって3000円の元手で何ができるというのか。
総選挙では民主党の比例区名簿にたまたま載せてもらって棚ぼた当選で年収3000万を手にした人もおられるが、出馬したくても仕事を辞める余裕も勇気もない。何とかならぬものかと考えるに、やはり最後の一発逆転は資格不要で誰でも買える宝くじしかない。
宝くじを買わないという人がいる。期待値が低いだの、当たるわけがないだのと、したり顔に腹が立つ。そんな人間はえてして、株やFXをやったりする。レバレッジをきかせてドカンと当てれば一発逆転も夢じゃないが、株やFXは外せば赤字もドカンと増えてしまう。そして丁に張れば半、半に張れば丁のごとく、往々にしてマイナス側に転ぶ。リターンもリスクも大きいのだ。が、宝くじは当たればでかいが、外れてもリスクは小さい。リターンは2億、リスクは300円。これぞローリスク・超ハイリターン、デフレ時代の救世主だ。ジャンボの一等当選確率は1000万分の1といえども、必ず誰かが当たる。この「必ず」というところに夢があるのだ。
みずほ銀行宝くじ部が発行している「平成20年度宝くじ長者白書」なるものがある。「長者」という言葉が何とも前近代的で、あくせくしていない語感が耳に心地よい。この白書に1000万円以上の高額当選者のアンケート結果が掲載されている。そこから浮かび上がる条件、まさに一発逆転へのパスポートだ。
白書によれば、宝くじ長者の平均像は男性が購入歴10年以上、年齢60歳以上、30枚購入した乙女座の会社員で、イニシャルはT・T(例えば、田中トオル)。
女性は購入歴10年以上、年齢60歳以上、20~29枚購入した山羊座の主婦で、イニシャルはM・S(例えば、佐藤マリ)。
一番気になるのは、当選の秘訣だ。これは高額当選者の言葉だけに説得力があるはずだ。その秘訣の第1位に輝いたのは「運」。次に「継続・忍耐」……当たり前すぎる(泣)。
当たった1億円を何に使うか。非常に悩ましい問題だ。嫌な会社勤めともおさらばできるのだろうか。世界一周もしてみたい。しかし、世の中の先行きが不安だし、やはり半分は貯金をすべきなのか。
きっと、いままで全く連絡を取ってこなかった親戚や友人が声をかけてくるだろう。冠婚葬祭には、少し多めにつつまなければ、後で陰口を叩かれることは目に見えている。ヘンなものを売りにくる奴もあらわれるだろう。よし、誰にも当選したことを言わないでおこう。生活もいままでのままにしたほうがいい。
と、あれこれ考えていくうちに、おかしな結論になってしまった。宝くじを買う楽しみには、きっとこういう想像することも含まれている。株やFXではこうはいかない。