文武両道の部員…睡眠時間は5、6時間だった
磐城の西グラウンドは校舎から数百メートル離れたところにあってサッカー部とソフトボール部と共用している。午後4時半ごろから練習を始めて7時ぐらいに終了。そこから塾にいく部員も多い。
「毎日、課題も出ますし一日の睡眠時間は5、6時間だった」と3人の3年生が言う。一昨年の部員の一人が東大に合格したというから文武両道を実践している。
部が抱える不安材料は部員が少ないこと。野球よりも部員減は深刻だ。今年度は3年生が6人。新チームでは2年生7人と1年生8人で丁度15人。中学までのラグビー経験者は各学年に一人ずつなのだという。部のツイッターには初心者歓迎を謳い、途中入部も問題ない。最近、未経験者が仮入部した。
「新人はタックルの仕方を一から始めたばかり。ルールもよくわかってないはず」と2年生の高萩康太キャプテン。新人戦が終わると辞めてしまうかも、と周囲は気をもんでいる。
佐藤監督が2年で花園に出場したときの優勝校は伏見工だった。そう、テレビドラマの『スクールウォーズ』のモデルでラグビーの人気が出てきた頃だ。そして今は忍ぶ時だ。
いずれにしろ、22年度の磐城は冬枯芝の上で、道半ばにして活動を終えた。吉田君と石川君は関東の大学でラグビーを続けるつもりだ。石川君が前を見据えて語気を強める。
「ニュースで、コロナで(他のスポーツのチームが)辞退なんて見るんですけど、自分らに降りかかってくるとは。実感がわかないっていうか、フワフワしてここまで来ちゃったような感じです。大学でラグビーを続けるのでレギュラーをとって全国大会に出たい。理不尽な終わり方を今後の糧にしないといけないので」
取材した日、グラウンドで1、2年生の練習のサポートをしていた3人は推薦入試のための課題作文などを書き終えたところだという。
「部活が終わっちゃって、数日たって、むしゃくしゃ落ち着かなかった。すぐにでもグラウンドで走りたかった」
今夏の高校野球の奈良県大会決勝戦。一方の高校でコロナ感染が広がり、レギュラー陣を欠いて大差で勝負がついた。甲子園大会が終了した数カ月後、互いにベストメンバーで記念試合をしたというニュースがあった。
この話を彼らに振ってみたが言わなければよかったと後悔した。目の前の3人の顔が曇ったのだ。
「そんな話もありましたね。何をしても辞退という事実は消えるわけじゃない。再試合といっても……。うちらはそんな気分になれない。なんかもう、燃え尽きたので」
プライドもあるだろうし、あっけらかんと言い放って懸命に吹っ切ろうとしているようだった。