今年ほど「死」について考えさせられた年はなかった

12月12日、1年の締めくくりとして世相を象徴する漢字一字、いわゆる「今年の漢字」が発表された。選ばれた「戦」という一字に賛同できるか否かは別として、「違うな。私ならこの一字だな」と思う人も少なくないのではなかろうか。

ちなみに、私の選んだ今年の漢字、それは「死」の一字だ。年の瀬、そして新年を前にして暗すぎだとか、縁起でもないとの意見もあるかもしれない。毎年毎年多くの人が亡くなるのだから、わざわざ今年の漢字として選ぶものでもないではないかと言う人もいるだろう。たしかにそうかもしれない。

だが今年ほど「死」、そして命の軽重、命の格差について改めて考えさせられた年はなかったというのが、私の率直な感想である。なぜなら在宅医療をする立場として、経済格差が命の格差につながる現実を、嫌というほど実感させられたからだ。

ベッドに横たわる患者のパルスオキシメーターの値を確認する医療従事者
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「軽症」のはずが、死亡者はむしろ増えた

今も収束が見えないコロナ禍であるが、今年は感染者の急増で幕を開けた。2021年夏の怒涛どとうの第5波の後は、10月から12月まで私たち医療現場の人間も文字通り「ひと息」つけていたのだが、オミクロン株の出現以降、急速な感染拡大が起こり、年初から始まった第6波は過去最多の感染者と死亡者を数えるに至った。そしていったんピークアウトし、新年度から5月そして6月と束の間の平穏の後に訪れた第7波。これも過去最多の感染者と死亡者を生じさせてしまったのである。

オミクロン株というと、「軽症」「カゼのようなもの」との印象を持たれている方も少なくないだろう。事実、第5波の時のような重症者が次々に外来に訪れるという事態とはならなかった。しかし感染者の急増に伴い、命を落とす人はむしろ増えたのだ。本稿執筆時点でわが国の新型コロナによる累積死亡者数は5万5000人を超えているが、その6割の3万5000人以上が、オミクロン株発生以降、すなわち今年に入ってからの死亡者なのだ。