「パスワードは合ってるんですが、接続できないんですよ」
「じゃあ、その雲業者に問い合わせろ」
「それが、接続できないと連絡先もわからないんですよ。接続できないときこそ、連絡したいのに。そもそも、どこの業者がやってるかなんて、そこまで意識して使ってないですよ。クラウドだけに雲をつかむような話だね、こりゃ」
「オチをつけてどうするんだよ。早く何とかしろ」そうこうしているうちに30分が経過。
「あっ、つながりました。なんか、調子悪かったみたいですね」。クラウドサービスは、信頼できる業者なら自前の設備よりはるかに安心できるが、それでも、ファイル保管などの責任を他人に一任することに変わりない。接続できない場合も自己責任である。それだけに、何を任せて何を任せないのかの見極めが大切だ。
「あった、あった、これですよ。あとですぐに取り出せるようにファイル名を『山田商会宛の見積書(機密)』にしておいたんですよ」と藤井君。すると、2人の様子を心配そうに見ていた大阪支社のITに詳しい社員が「あれ、そのファイル、一般公開設定になってますよ。世界中の誰でも読める状態です!」。
「おい、雲から世界中にうちの機密を配布したのか。ほかの取引先や競合に漏れたらどうするんだっ」
「まさかそんな設定になってたなんて……」
「とにかく早くプリントして出発するぞ」2人は急ぎ足で取引先へ向かった。
※すべて雑誌掲載当時
(佐藤尚規(インターネットコンサルタント)、ネットマークス=取材協力)