最低限押さえておきたいIT用語を、コミカルなストーリー仕立てで解説する。


※主な登場人物
藤井君/おっちょこちょいで新しもの好きの若者。山田部長の部下。
山田部長/凸凹食品株式会社のおとぼけ営業部長。IT系はものすごく苦手。
木村君/凸凹食品のシステム担当者。


 

ツイッターを始めて以来、すっかりITの話題に興味津々の藤井君。システム担当の木村君から、サーバーの仮想化の話を仕入れてきた。

仮想化/実際の状態とは違う状態に見せかける技術。例えば一台しかないサーバーを複数台あるかのように見せかけて、それぞれに別の仕事をさせるとか、5台あるハードディスク装置をあたかも一台であるかのように扱って、大量のデータを保存するといった応用例がある。この「あたかも~のように」が仮想化のキモ。よく考えれば、ワープロや表計算、ゲーム機、楽器などに化けるパソコン自体、仮想化の発想なのだ。

「うちの会社のサーバー、エスアイヤー山で火葬して10分の1にしちゃうんだって」

無理解の受け売りは、時に脅威であり、狂気でもある。

「えっ、そんな儀式があるんですか」と真央ちゃんは目を見開いている。

「で、どこの山だって?」と山田部長。

「エスアイヤー山って聞きましたけど、海外ですかね」

そこに偶然通りかかったのは、システム担当の木村君。伝言ゲームがわずか2人目で破綻という情報伝達の怖さを目の当たりにした瞬間だ。例えばツイッターがこんな困った人たちばかりだと、デマ情報が入り乱れて大騒ぎだろう。そもそも、真実だろうとデマだろうと、伝わり方、広がり方を高速化・大量化・省力化するのがITなのだ。木村君は引きつった顔で説明する。

「火葬じゃなくて“仮想”です。今はコンピューターの能力が上がって余力がありますから、一台にいろんな役割を与えられるんです。一台なのに、あたかも複数台あるかのように振る舞わせるのが仮想化技術です」

「じゃあ、コンピューターの仮装大会だ」

「まあ、化けると言う意味では『仮装』も言い得て妙ですね。ともかく仮想化で機械の数が減れば消費電力も設置スペースもCO2排出量も減りますよ」

「ほぉ、じゃ、うちも有能な社員が仮想化して企画も営業も経理もやってくれたら、藤井は不要ってことか。人件費も机も呼吸のCO2もカットできるし」