大型リゾートホテルを目指す気はない

――貸別荘や大型リゾートホテルとは運営の仕組みが根本的に違うと。

従来、そうした産業は資金面もコスト面も非常に重いことから新規プレーヤーの参入が難しく、イノベーションが起きにくい状況にありました。ところが、近年はデジタル技術が進化し、2021年には旅館業法が改正されて施設の無人管理がOKになりました。技術的な部分と法的な部分が進歩したおかげで、僕たちみたいな新参者も参入できるようになったんです。

ただ、この先、大型リゾートホテルを目指す気はありません。「自然と共に生きる」という企業理念に反しますし、何より大型ホテルは老朽化した際の再活用が難しい。当社のキャビンは、新しいライフスタイルを提案するという目的の下すべて新築にしていますが、せっかく新築するのに従来のホテルと同じミスを犯してはいけないと思っています。再活用も見据えて、いかに軽やかにつくっていくかを大事にしたいですね。

もうひとつ、僕たちはエアビーやシェアリングの魅力を知っている世代です。どこかに宿泊するときも、フルサービスではなくそこで「暮らし」をする楽しみを求めています。滞在する土地のスーパーで、地元の食材を買って料理するのも楽しみのひとつ。こうした考え方から、SANUでも従来のホテルが行ってきたフルサービスとは違う価値を提供していくつもりです。

テレワーク
写真提供=SANU

「非日常」ではなく「日常の延長」を提供する

――利用者からはどのような声が上がっていますか。

サービス開始から今年11月までの1年間で累計8000泊超のご利用をいただいていますが、高い評価をいただいています。利用者からは定期的に聞き取りを行って改善すべき点も抽出しており、サービス向上に活かしています。

ご満足いただけなかった点で言えば、「せっかく自然を感じに来たのにキャビンの周辺に何があるのかわからない」といった声や、特に夏場に「連泊したくても予約が取れない」というご意見をいただきました。そのため、現在では各キャビンに周辺の飲食店やアクティビティを記したエリアマップを設置したり、会員が希望通り宿泊できるよう調整も行いました。

SANUは「非日常」を届けるのではなく、あくまで「日常の延長」です。キャビンの掃除やベッドメイキングなど、会員が快適に日常の延長を過ごしていただくための最低限のサービスは提供しますが、高級ホテルのような「特別なサービス」を求める形態ではないということは今後も発信していければと思います。