システム構築に必須なのが、やはり人脈である。外部のプロと手を組み、社員は人材派遣で十分、とキッパリ。
「システムを考えるのは、子供が粘土や紙でおもちゃを作るのと似ています。単純ですよ。計算は足し算と引き算、管理するのは収入と支出、投資と借り入れ、資産と負債だけ。効率のいいものだけ残していけばいい。いい商品を提供すれば率は上がる」
あとは度胸だけ、とリー氏は笑う。
「手堅くいくか、大きくいくかは自分次第。その大きな壁となるのが恐怖心。絶対に取り除かなければならない。当然、失敗もします。私も8億円の投資で5億円損したことがある。でも、あくまで自己責任。他人に迷惑はかけない。問題はどう取り返すかだけです」
同じ事業家の間でも、システムや仕組み構築の有無によって、大きな“格差”が生じるようだ。
「これまでは綱渡りの連続でしたが、飛行機に例えれば上昇から水平飛行に移ったところ。もう落ちることはない。今後は上だけ見ていればいい」
淡々とそう語るシャムロック・コンサルティングの千葉豊社長(39歳)は、日本とシンガポールを拠点に大手金融・保険会社や官公庁相手のソリューションビジネスを手がける。
「日本で事業を回して、年収2000万円くらいで何となくシンガポールに来ている若いIT社長は相当いますが、投資案件について話を振っても、なかなか会話がかみ合いません。事業がまだ不安定で、仕組みが回るところまでいってないようです」
自然と自分より年収の高い日本人事業家たちと付き合うようになる。
「事業家というより資産家。いくら持ってるのかわからないけど、話を聞くとケタが違う。マスメディアには絶対に出てこない方々。会った瞬間に、オーラというか、器のでかさがわかる」
勤め人にはかなり高めのハードルではある。ただ、彼らの視野に常に入っているのはお金そのものではなく、自分が価値を置く事業であり、人との関わりである。お金を生むシステムや仕組みのベースはそこにある。税金ばかりかかって馬鹿馬鹿しい、という事情もあるだろうが、お金じたいを目標に追いかける心持ちでは、どうやら大金とは縁遠くなるものらしい。