「貯め方」よりも「使い方」が大事

では、お金を“呼び込む”ような人や事業との関わり方とはどんなものか。

「貯めることに腐心するより、自分の価値観に沿って気持ちよく使っていくことで、自分の周りにお金のフローをつくっていく。そして、いつも自分がいい感情を持つように努力する」

独立系ファイナンシャル・ドクターの北川邦弘氏(55歳)は、自身の心がけをそう語る。

「アメリカで、宝くじで大金を手にした人の10年後を追跡調査したら、ほとんどの人が当選前と変わらぬ生活に戻っていたそうです。いくらお金を持ったところで、その人の器量に見合う額しか残らない。大切なのはお金で何を実現したいのか、どういう感情を手に入れたいのかということです」

北川氏は、二代前から実業家。幼少時から激しい浮き沈みを経験してきた(プレジデント社刊『なぜ貯金好きはお金持ちになれないのか?』6月29日発売)。

「昔の私はものすごく嫌な奴でした。成金志向というか傲慢で、自分の感情を犠牲にしてでも金を儲けよう、増やそうとしていました。子供は女房に任せ切り。何億円も稼ぐほうがおまえらのためになるんだ……という感じでした」

一時は約100億円の資産を持ちながら、バブル崩壊ですべてを失い、数十億円単位の借金に苦しみ続けた。

44歳のときにファイナンシャル・プランナー(FP)へと転職したのが、大きな転機となった。

「お金持ちにお会いする機会が増え、その習慣や考え方と身近に接し、多くを学ぶことができました」

なかでも衝撃を受けたのは、何人かの裕福な米国人FPとの出会いだった。

「何の得にもならないのに、米国の自宅に招き、寝室まで見せ、食事も奢ってくれた。グアムで毎年ホームステイさせてくれる米国人も。なぜそんなに親切なのかわからなかった。聞けば“It's my pleasure”と言う。以前の私なら『何か魂胆がある』『絶対油断するな』で終わりだけど、そんな頑なな考え方が一つ一つ氷解していきました」

金持ちの余裕といえばそれまでだが、「他人を喜ばせるのが喜び」という価値観そのものが、北川氏の眼には新鮮に映ったようだ。